高額配当決着となった年はそれほど多くない

AIマスターM(以下、M) 先週は朝日杯FSが行われ、単勝オッズ3.6倍(2番人気)のカヴァレリッツォが優勝を果たしました。

伊吹 恐れ入りましたと言うほかありませんね。スタート自体はそれほど良くなかったのですが、すぐに行き脚がついて中団のポジションを確保。同じくらいの支持を集めていたエコロアルバ(4着)、アドマイヤクワッズ(3着)が4コーナーで馬群の外めに持ち出す中、先行した各馬の後ろを追走する形でゴール前の直線に入っています。そのまま内ラチ沿いに進路を取り、脚が上がった各馬をあっさりかわすと、先に抜け出したダイヤモンドノット(2着)を猛追。決勝線の手前で捕らえ、最後は逆に3/4馬身の差をつけて入線しました。C.デムーロ騎手のレース運びは完璧だったと思いますし、鞍上のイメージ通りに末脚を伸ばしたカヴァレリッツォの潜在能力も相当なもの。今回のメンバー構成においては、このタッグが頭ひとつ抜けた存在だったということでしょう。

M カヴァレリッツォはこれが通算2勝目。前走のデイリー杯2歳Sではアドマイヤクワッズに先着を許したものの、大一番で見事にリベンジを果たした形です。

伊吹 デイリー杯2歳Sは、レース序盤の向正面で最後方から先団へとポジションを押し上げる少々強引な競馬。結果的にレコード決着となるようなペースで、大きく失速してもおかしくない状況だったのですが、そんな中でも後方からコースロスなく差してきたアドマイヤクワッズとアタマ差の接戦に持ち込んでおり、勝ちに等しい内容でした。2代母のバラダセールは現役時代にアルゼンチン1000ギニーとアルゼンチンオークスを勝っている名牝。これまでのレース内容だけでなく、血統面からもポテンシャルの高さを感じます。

M そうなると、来年以降も目が離せませんね。

伊吹 陣営のコメントを見る限りだと、現時点では1マイルから2000mくらいのレースが合うタイプと見ている模様。2代父のロードカナロアがスプリンターで、父のサートゥルナーリアも2000m前後がベストというタイプでしたから、おそらく最終的にはそのあたりが主戦場になるのではないでしょうか。もっとも、近親に菊花賞で3着となったサトノフラッグ、牝馬ながらも日本ダービーで小差の5着に健闘したサトノレイナスがいることを考えると、比較的早い時期であればやや長めの距離を問題なくこなせそうな気も。気性面の成長度など、今後の動向をしっかり注視しておきたいところです。

M 今週の日曜中山メインレースは、年末の国民的行事としておなじみのビッグイベント、有馬記念。昨年は単勝オッズ10.9倍(5番人気)のレガレイラが優勝を果たしました。ちなみに、その2024年は単勝オッズ30.1倍(10番人気)のシャフリヤールが2着、単勝オッズ4.0倍(2番人気)のダノンデサイルが3着という結果で、3連単19万6520円の好配当決着になっています。

伊吹 過去10年の有馬記念における3連単の配当を振り返ってみると、平均値は5万4375円、中央値は3万3725円。昨年のようにやや上振れした例もありますが、6万円未満の年が8回、3万円未満の年が5回、1万円未満の年が3回という内訳でしたから、基本的に堅く収まりがちなレースであると見ておいた方が良いかもしれません。


M 過去10年の単勝人気順別成績を見ても、単勝7番人気以下で馬券に絡んだ馬は6頭だけ。上位人気馬の好走率が極端に高いわけではないものの、積極的に伏兵を狙っていくべきレースとまでは言えない印象です。

伊吹 より詳しく見てみると、単勝7番人気から単勝11番人気の馬は2015年以降[1-4-1-44](3着内率12.0％)、単勝12番人気以下の馬は2015年以降[0-0-0-49](3着内率0.0％)でした。超人気薄の馬が波乱を演出した例はさすがに少ないので、中位人気くらいの馬をどう評価していくかが最大のポイントと言えるでしょう。

M そんな有馬記念でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、タスティエーラです。

伊吹 面白いところを挙げてきましたね。ちょうど中位人気あたりでしょうし、扱いに頭を悩ませている方は少なくないはず。

M タスティエーラは2023年の日本ダービー馬。今春にも香港のクイーンエリザベス2世カップを勝っています。もっとも、2走前の天皇賞(秋)は8着、前走のジャパンCは7着どまりで、勢いを失いつつある印象も。見方によって評価が割れそうな分、それなりに妙味あるオッズがつくのではないでしょうか。

伊吹 ただ、今回がラストランとのことで、陣営にも期するところがありそう。タイミング的には絶好の狙い時かもしれませんね。少なくとも、Aiエスケープはそう考えている模様。この見立てを踏まえたうえで、好走馬の傾向とこの馬のプロフィールを見比べていきたいと思います。

M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりですか？

伊吹 まずはこれまでの実績を素直に評価したいところ。2021年以降の3着以内馬12頭中10頭は、東京・中山・阪神のビッグレースで優勝を果たしたことがある馬でした。


M なるほど。GI未勝利馬はもちろん、京都のGIしか勝っていない馬も強調できませんね。

伊吹 逆に言うと、ハイレベルなメンバー構成になりやすい東京、今回と同じ中山、ゴール前の直線に急坂がある阪神でGIを勝ったことのある馬は、ひと通りマークしておくべきでしょう。

M 先程も触れた通り、タスティエーラは3歳時に東京芝2400mの日本ダービーを制した実績がある馬。この条件は問題なくクリアしています。

伊吹 あとは脚質も明暗を分けそうなファクターのひとつ。前走が国外のレースだった馬を除くと、前走の4コーナーを3番手以内や10番手以下で通過した馬は苦戦していました。


M 極端な競馬をした直後の馬は、疑ってかかった方が良さそうですね。

伊吹 おっしゃる通り。今年はこの条件に引っ掛かっている馬がわりと多いので注意しましょう。

M タスティエーラは前走の4コーナー通過順が6番手。中団あたりでレースを進めるタイプですから、このレース向きの脚質と言って良いかもしれません。

伊吹 さらに、同じく2021年以降の3着以内馬12頭中9頭は、馬齢が4歳以下でした。


M 高齢馬は過信禁物、と。

伊吹 ちなみに、馬齢が5歳以上、かつ前年の有馬記念において4コーナー通過順が8番手以内となった経験のない馬は2021年以降[0-0-0-28](3着内率0.0％)と3着以内なし。前の年にもこのレースを使っていて、なおかつ積極的な競馬をしていた馬でない限り、高齢馬が上位に食い込むのは難しいようです。

M タスティエーラは馬齢が5歳、かつ昨年の有馬記念に出走していない馬。残念ながら、この条件には引っ掛かっています。

伊吹 もっとも、今年のメンバー構成においては不安要素が比較的少ない一頭。もともと無理に嫌う必要はないと思っていましたし、Aiエスケープが有力と見ているのであれば、積極的に狙ってみるのもひとつの手でしょう。ちなみに、枠番が6枠から8枠の馬は2021年以降[0-2-0-22](3着内率8.3％)。近年は明らかに外枠不利なので、人気の中心となっている馬がこのあたりの枠に入り、なおかつ自身が好枠を引き当てたらより楽しみです。