スマートフォン版へ

勢司和浩調教師 Part3 ハード調教の秘密

  • 2007年10月24日(水) 13時55分
  • 0
 勢司厩舎の調教について調べると、多くの管理馬たちの追い切り時計は決して特筆されるものではない。


勢司和浩調教師

 その一方で、毎日の調教は1Fを15秒で走る、いわゆる15-15のキャンターで行なわれ、他の厩舎と比べてハードと言える。

 「鍛錬をするということは、毎日毎日の調教なんですよ。週に2度行なわれる“追い切り”ではありません。追い切りはあくまでレースに向けての調整であり、そのために毎日の普通キャンターがあるわけです。追い切りにおいて、馬が自ら普段よりも走れるようにするのは、日々の調教なんですよ。速い普通キャンターをするなかで、それ以上は行かせず我慢させるんです。それを“今日は行っても良い”というのが、追い切りということなんですよね」

 つまりは、普段は速いキャンターをするのだが、それ以上は行かせない。そうすることによって、馬に「行きたい」という気持ちが起こってくると勢司師は言う。我慢させることによって生まれる「走りたい」という馬の気持ちを、今度は追い切りで発散させてあげるということなのだ。

 他にもこのような、いわゆる“馬なり”調教は、長年に渡りリーディングトップの座に君臨する藤沢和雄厩舎や、シーザリオやウオッカなどの名馬を手掛ける角居勝彦厩舎の調教においても目にするが、勢司師はその方法をV・オブライエン厩舎で学んだという。

 「ヴィンセントのところはもっと厳しく、ハードな内容でした。それこそ毎日14-14を切るキャンターでやっていましたから」

 調教師になってからも、毎年のようにイギリスをはじめとするヨーロッパはもちろん、アメリカやオーストラリアにも、新しい何かを求めて出掛けて行く勢司師。そうして見聞を広げる勢司師が、世界中のトップトレーナーたちにみる「唯一の共通項なんです」と言うのが、“ハード調教”だというのだ。

 「ヴィンセントばかりでなく、H・セシル、M・スタウトなど、世界のトップをみても、本当に厳しい調教が行なわれているんです。それがたとえどんな良血馬であったとしても、です。逆に言えば、どんな良血馬でも、そのハード調教に耐えられなければ競走馬ではないと考えるわけです。実際、僕がヴィンセントのところにいたときに乗せてもらっていたG1馬は、非常にハードな調教をしていましたね」

 これまで勢司師の管理馬のなかで、アイルランドで学んだグローバルスタンダードとされるハード調教に耐えたのは、スマイルトゥモローだけだという。

続く

勢司和浩 (せいし かずひろ)  美浦所属
 船橋競馬場の厩務員を経て単身アイルランドへ競馬留学。名馬ニジンスキーを手掛けるヴィンセント・オブライエン厩舎で2年間の修行を積み、日本へ帰国後は昭和61年から美浦・稗田敏男厩舎、平成2年から美浦・国枝栄厩舎で調教助手を経験。平成11年から美浦トレーニングセンターの調教師となる。02年スマイルトゥモローでオークスを制し、GI初勝利を挙げた若手調教師。

「3強インタビュー」から「よく当たる予想」まで、天皇賞・秋の大特集はこちら

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング