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俺は高校進学と同時に家族を事故で失って、ある程度あった遺産も親戚にだ
まし取られ、残ったのは築四十年の古い家だけだった。
他人がすべて敵に見えた。高校も中退し、ほぼ引きこもりでネットばかりや
って過ごしていた。
五年が過ぎた。
学歴もなく、特技も働く気力もなく、友人もいない。
なんとか食いつないでいた貯金も乏しくなり、やけくそで競馬で金を増やそ
うとした帰り道、この自称神と悪魔のハーフと名乗る少女リリンと出会った。
府中本町駅の餃子で有名な中華料理チェーン店の前で、チワワに吠えられて
立ち竦んでいたのだ。
誰も助けない。俺も最初は見てみないふりをするつもりだったが、なぜかは
今でもわからない。ただ、心の赴くままに従ったのだ。
たぶん、誰も手を差し伸べないクソな現実に嫌気がさしたのかもしれない。
「ふむ。恐るべきケルベロスより、わたしを救いだすとは人の子の分際でなか
なか見どころがあるぞ。うんうん。苦しゅうない。わたしの下僕にしてやろ
う」
と、涙を矯めた目で微笑んできた少女。
なんのことはない。
そのまま我が家に転がり込んでしまった。
炊事、洗濯、掃除、家事全般。まるでダメ。
その上、変態で風呂上がりにパンツ一丁でウロウロする露出狂なのだけど、
競馬の予想だけはベラボーにうまかった。
ちなみにリリンの言う感謝ポイントとは、人から感謝されると貯まるポイン
トで、それが1億ポイント貯まると魔界の扉を開くクーポンと交換できるらし
い。
だから、リリンはネットで無料の競馬予想をして、『いいね』を集めること
に夢中なのだ。
人から感謝されることが目的なら、町内清掃でもボランティアでもすれば良
いと思うのだが、それは自分の中の半分悪魔の血が許さないのだという。
まったく、難儀だねぇ~。まあ、知らんけど。
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