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斎藤誠調教師 Part1 ゴスホークケン落札秘話!

  • 2008年02月13日(水) 21時55分
 すでに春のクラシック本番まで2か月を切ろうとしている2月。有力馬たちの動向に注目が集まり始める時期なのだが、その一方では今年のクラシックを通り越し、更に1年先のクラシック候補を探し出すPOGが話題に登り始める時期でもある。


斎藤誠調教師

 昨年、トレーニングセールの本場米国のなかで3番目に行なわれる、OBS・オカラセールの2回目が終わったとき、“マルターズ”の冠名で知られる藤田与志男オーナーによって購入された1頭の2歳馬について、「注目するべき」と知り合いのエージェントから情報が届いていたことを、いまでもハッキリと覚えている。

 その馬は上場番号300番。1f10.1(日本式でいうと10.2秒)を記録し、16万ドル(約1744万円・1ドル=109円)で落札されたBernstein産駒は、後に日本に輸入され、斎藤誠厩舎所属となり、“ゴスホークケン”と名付けられ2歳チャンピオンに輝いたのだ。

 あのセールには、藤田氏と斎藤師の2人で訪れていた。これまでにも数多くの外国産馬を所有してきている藤田氏は、馬を選ぶ際はまず“血統”からアプローチをするという。

 「ご存知の方も多いかもしれませんが、藤田オーナーはこれまで日本に合いそうな、しかもまだ結果の出ていないというか、メジャーになっていない血統の馬たちを生産、あるいは発掘して成功を収めておられているように、先見の明がある方です。セリではその独特の感覚で30〜40頭を文字からピックアップして、そのうち10頭前後の馬たちを見に行かれるようですね。そこで我々調教師に意見を求められるといいますか、「どう思う」と聞かれるのです」

 馬体という観点も含め、話し合いのなかでフルイにかけられ、さらに世界的には“常識”とされる、骨やノドなどのチェックを含めた獣医検査にかけられ、それをパスした馬たちだけを「競る対象」とするということなのだ。

 「最終的に競るということになったのは5頭だったと記憶しています」という斎藤誠調教師。

 「オーナーの所有馬には多くみられるのですが、母父であるGrand Slamの血が魅力だったのでしょう」というのがきっかけというのだが、第一印象について斎藤師は「いまのような体型ではなかったんですよ」と振り返る。

 「脚が長くスラッとしていて、芝の中距離でも対応できそうなタイプで、一見“華奢”とさえ言える感じだったんです」

 その姿に斎藤師は「日本の馬場への適性がありそう」という印象を持ったというが、それ以上に“魅力”を感じたのは、その“動き”であったという。

 「1f10.1は、日本で言えば10.2秒ということになるのですが、多くの馬たちは手綱が動いたり、あるいは追われてタイムを出すのです。それがあの馬は持ったまま、まったくの馬なりでマークしていましたから」

 2歳の3月に1f10.2秒というタイムで、それも馬なりで走ることができる。その優れたエンジンは、斎藤師に「魅かれました」と言わしめるほど、原石として光輝いていたことだろう。

 なぜ原石かと言えば、このセールでこそ16万ドルという値が付いたのだが、おおよそ10万ドルというセールの平均価格を上回っているものの、何よりも1歳時に2万5000ドル(約270万円)という値段で取引されていた地味な存在であったのだ。

続く

斎藤誠 (さいとう まこと) 美浦所属
 1971年生まれ、千葉県出身。平成5年7月に美浦・前田禎厩舎にて調教厩務員となり、平成18年から調教師へと転身。開業2年にしてサンツェッペリン(重賞1勝)、ゴスホークケン(GI1勝)などを管理する若手調教師。

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