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帯広ばんえい競馬開幕

  • 2008年04月29日(火) 19時30分
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 4月26日(土)、今年度の帯広ばんえい競馬が開幕した。上空に薄い雲がかかっていたがほぼ晴天で気温も平年並み。さっそく開幕を待ち望んでいた多くのファンが午前中から続々と競馬場に詰め掛け、一ヶ月ぶりの生のレースに熱い声援を送っていた。

帯広競馬場スタンド

 初日の26日には全11レースが組まれ、うち1~3レースが新馬戦である。開幕に先立って13日に実施された能力検査で合格した213頭がこれから順次デビューしてくる。

 第4~11レースが古馬戦である。初日とあって個人協賛レースが3つ、企業協賛レースが3つの計6レースも組まれていたのが印象的だった。

ばんえいレース風景1

 当初、「一着賞金が10万円から8万円に減額されるらしい」との情報があり、もしそれが本当ならば、高知競馬を抜いて「日本一低い賞金」の競馬場となるはずだったが、その後、内部で検討した(たぶん)結果、どうやら10万円は据え置きとなったようだ。

 しかし、出馬表を見ると、4~11レースのうち、メーンの10レースを除く計7レースが、本賞金を3着までとしており、4着と5着はカットされていた。昨年より出走手当てを増額した(25000円→33000円)ために、本賞金を削減して帳尻を合わせたということだろう。苦渋の決断という他ないが、このあたりの事情についてはまた後述する。

ばんえいレース風景2

 さて、市営競馬組合による運営から民間企業による運営に変わった昨年と比較すると、今年の開幕はやや地味に映った。主催者発表の「開幕イベント」として挙げられていた項目は以下の通り。

1.騎手によるお客様お出迎え(入場門、開門時)
2.紅白まんじゅうプレゼント(先着200名様)
3.ばんえい周遊キッズスタンプラリー(各日先着300名様)
4.カフェテラス新設記念抽選会(100名様に割引券)
5.キッズコーナー遊具設置
6.フードコーナー(競馬場南側特設テント)
7.おまつり縁日コーナー(南側広場)
8.馬とふれあい動物園(南側広場)
9.リッキーと遊ぼう(南側広場)
10.シャボン玉イベント(南側広場)
11.十勝くみあい農機事業センター展示即売会
12.十勝青空レディーお披露目
13.開幕セレモニー(砂川市長の挨拶を指す?=筆者注)
14.帯広市特別嘱託職員(リッキー号)任命式
15.藤丸杯ちびっこばんば大会(2レース)
16.ふるさと銀河線りくべつ鉄道PR

 かなりの数の項目になるが、スタンド内部を分煙化したり、多くのボランティアが参加して色を塗り替えたり、パドックの位置を南側からスタンド正面左側に移動したり、といった大きな変化のあった昨年に比べると、やはりインパクトに欠ける。

 限られた予算の中で、開幕イベントを集中的に繰り広げたわけだが、どうも「馬券売り上げ増に直結しそうなもの」は見当たらず、ほとんどが家族連れの客向けのサービスばかり。もちろん無駄だとは思わないし、家族連れで競馬場を訪れた人々が将来的には熱心なばんえいファンになってくれる可能性も否定するものではない。

 だが、新体制になって2年目の今年こそ、恒常的な安定経営を確保するべく、いかに馬券を売るかに取り組みたいところだ。ここが地方競馬の屋台骨を支えるもっとも重要な部分であり、命綱でもある。

 「十勝太郎」さんという方のブログ3月29日付け記事に次のような内容がある。「馬産は以前から赤字だった。本業の畜産などに支えながら、馬を愛する農家が必死に繁殖に取り組んできた。その本業も厳しくなり、追い込まれる」そして「子馬が生まれ約1年半かけて販売するまでに1頭当たりの生産コストは約150万円」と続ける。しかし「馬の値段は肉用で50~60万円、競走馬で良くて100万円」なのだそうである。そして「昨年から飼料代も高騰し、もう明日にも止めるかも知れない」という生産者の声を紹介している。

 生産者がいて、競馬続行に必要な頭数が十分に生産され、それを馬主が買い求め、あるいは生産者自らが競走用に供することでレースが成立する。厩舎関係者は、レース賞金からの進上金や手当てによる収入と馬主からの預託料収入で生計を立てる。基本的な仕組は平地競馬と変わらない。

 だが、「十勝太郎」さんによれば「十数年前までは三日間で1250頭いた」能力検査に出走する新馬が、今年は268頭まで減ってきている。因みに昨年は33レースに309頭が出走したというから、この一年だけでも41頭の減少である。

 「売れても赤字、自分で使っても赤字」ならば、どうしたって生産意欲は減退して行く。黒字にはならなくとも、せめて馬代金(あるいは生産コスト)を含めた原価程度は回収できるような仕組にならなければ、いずれ生産から崩壊して行くことになろう。そのためにも、屋上屋を重ねるような結論で申し訳ないが「馬券売り上げを増やす」以外に、ばんえい競馬が生き残る道はないのである。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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