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加藤征弘調教師 Part6 これからは大きいところを狙う!!

  • 2008年05月28日(水) 13時50分
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 1F、つまり200mを14秒で行くことをサークル内では“14-14”という言葉で表現するのだが、実は加藤征弘厩舎が開業するまで“15-15”が常識とされていた時代があった。しかし、加藤征弘厩舎が“14-14”というメニューを取り入れて実績を残すと、明らかに“14-14”を取り入れる厩舎が増えた。


加藤征弘調教師

 加藤征弘調教師にその話を向けると「そんなことはないよ」と否定し、「14-14というのは実は難しいんだよ。本音を言うと14-14はやりたくない」と言うのだ。

 「なぜ14-14なのかと言えば、美浦の坂路で栗東の“15-15”の負荷を求めたときに、1秒速くなってやっと同じくらいになるからです。ただ、1秒速くなるということはそれだけ脚元への負担も大きくなるのは間違いない。そうなると、今度は乗り手の技量が問われます。15-15とは明らかに違うからね。15-15では馬がその気になる手前だったりするから、普通に乗れれば問題ない。でも、14秒ということになると、ある程度馬を出して行くから、馬がその気になる。でも、下手な乗り手だと13-13秒と速くなってオーバーワークになってしまうことがあるんです。そうなると、故障のリスクも高くなってしまうわけですよ。たかが1秒というかもしれないけれど、されど1秒なんですよ」

 1秒という言葉に力を込めた加藤征弘調教師は、「実は美浦の坂路だと、そこにジレンマを感じたりするわけですよ。たしかに栗東と同じ負荷を坂路で求めることはできるけれども、本当に難しいんだよな。できるだけ軽い負荷で、最大の効果を求めたいんだけどね」と言うのである。

 それでも、普段から東京、中山と同じように京都、阪神へ遠征をし、キッチリと結果を出してきている。こちらの言葉に加藤師は「そこはウチの馬たちに限ったことではないけれど、馬場の得手不得手を含めた番組選びかな」と語る。「同じ1400mでも、他に比べて京都の1400mは、それこそ“1秒脚がタメられる”ということは徹底的に分析しているつもり」と加藤師。“西高東低”が叫ばれ続けるなか、加藤征厩舎は関西馬と互角に戦い、結果を残している。そこには、やはり加藤師の分析力が大きく影響しているわけだ。

 話は変わって先週のある朝、「弱いところがあって遅くなってしまったのだが、能力は相当高いから走ってくると思うよ。それにしても、来週がダービーだって言うのにね」と、調教を終えて、前を通り過ぎていく2億円馬ダノンマーチャン(3歳)の姿を追いながら苦笑いを浮かべた。

 「リーディングというか、毎年の厩舎スタッフ賞だけではダメなんです。これからは大きいところ(GI)を狙っていくことにするよ」と語る加藤師の元に、例年に勝るとも劣らない良血の2歳馬たちがスタンバイしている。

続く

加藤征弘(かとう ゆきひろ) 美浦所属 1965年9月14日生まれ、東京都出身。厩務員、調教助手として活躍した後、平成14年から美浦所属の調教師として開業。2004年にはピットファイター(武蔵野S)で重賞初勝利。昨年5月にはシャドウゲイトがシンガポール航空国際を勝利し、初のG1制覇を達成した。2003年から5年連続して優秀調教師賞(関東)を受賞している新進気鋭の若手調教師。

※当コラムは加藤征弘調教師編をもって終了いたします。

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