1989年の
新潟記念に優勝したのは佐藤林次郎厩舎の
ハーディゴッドという馬だった。その
ハーディゴッドの厩務員が、現在
アルフレード(牡6・美浦・
手塚貴久)を担当している滝口政司さんだ。もし
アルフレードがトップでゴールインすれば、今年58歳の滝口さんにとっては26年振りの
新潟記念の勝利となる。
ハーディゴッドには両前肢のトウ骨に骨膜があり、それにずっと悩まされた競走生活だった。
「現在のようにウッドチップコースや坂路など設備が整っていれば、もう少し走れたんじゃないかな」(滝口さん)
新潟記念の2走後の
福島記念は、骨膜の影響もあって1番人気に推されたものの13着に敗れた。それが
ハーディゴッドの最後のレースとなった。
「
ハーディゴッドの馬主さんが良い人でね。引退後、北海道に向かう馬運車に一緒に乗って行くことができたんですよ。到着したら
ハーディゴッドの生産牧場のご夫婦が迎えに来てくれていて、生まれ故郷の小さな牧場を見せてもらいました」と、滝口さんは26年前の思い出を語った。
滝口さんの厩務員生活も38年、思い出深い
ハーディゴッドが
新潟記念に優勝して26年の歳月が流れた今年、再び
新潟記念優勝のチャンスが巡ってきた。
「
ハーディゴッドは、大人しくて扱いやすい馬でした。それに比べると
アルフレードはヤンチャでね。洗い場で蹴られてあばら骨を折ったこともあります。鉄屋(装蹄師)さんも、苦労していますよ。女性や子供、カメラを持った人には大人しいんですけどね」と、滝口さんは笑顔を見せた。そしてベテランらしい淡々とした口調で、
アルフレードについて付け加えた。
「この夏の暑さは問題なかったですし、状態は良いですよ。追い切りの動きにも迫力が出てきました。マイルくらいの馬かなと思っていましたけど、2000mでも大丈夫そうですね」
2012年の
日本ダービー後に右前浅屈腱炎を発症した
アルフレードの休養は1年8か月に及んだ。復帰後しばらくは成績が伴わなかったが、今年に入って
東京新聞杯(GIII)2着、
新潟大賞典(GIII)3着、
七夕賞(GIII)5着と掲示板を外さず、安定した走りを続けている。
9月2日(水)に行われた最終追い切りの後、手塚調教師も「馬もヤル気を見せていますし、今年に入って一連のデキをキープできています」と状態の良さに太鼓判を押した。2011年の
朝日杯FS(GI)以来、勝ち星から遠ざかってはいるが、ベテランの滝口さんのケアのもと、2歳チャンピオンの復活があっても不思議ではない。(取材・写真:佐々木祥恵)