11月3日(火)、
大井競馬場で行われた
JBCスプリント(JpnI・ダ1200m)で、紅一点の
コーリンベリー(牝4・美浦・
小野次郎)が見事な逃げ切り勝ちを演じた。
栗東の柴田政見厩舎の勇退にともない、9月30日の
東京盃(JpnII・3着)後に
小野次郎厩舎に転厩。その初戦での勝利だった。
「ウチの厩舎で頑張ってくれた
コーリンギデオン(
父オンファイア)の半妹ですからね」
コーリンギデオンは、平井雄二厩舎の解散で小野(次)厩舎に転厩後、ダート戦線で活躍し、計4勝を挙げて準オープンまで出世している。
「その関係もあって、
コーリンベリーが当歳の時に牧場で見せてもらいました。
ギデオンは脚が曲がっていましたが、この馬は真っ直ぐでとても良い馬でしたし、父が
サウスヴィグラスだからダートで走るだろうと思っていました。栗東の柴田政見厩舎に入厩してからも、ずっと競馬を見てきました。当歳から知っている馬が、まさから柴田(見)先生の勇退でウチに来てくれるとは思っていませんでした」
と、転厩の経緯を教えてくれた。
「環境が丸っきり変わったわけですから、2日ほど飼い葉食いは落ちましたけど、その後すぐに食欲も戻りました」と、新しい場所にもすぐ慣れた。
「昨年の
JBCレディスクラシック(JpnI・9着)でゲート内で尻もちをついたのも知っていましたけど、こちらに来てからはとても落ち着いているんですよね。中間(10/22)、栗東にいた時との比較など感触を確かめてもらいたかったので、弘平(松山騎手)に乗りに来てもらいました。栗東にいた時はチャカチャカしていたみたいなんですけど、落ち着いていると弘平も言っていました。それで以前はメンコをしていたのですが、メンコも外すことにしました」
順調な調整過程を経て、当日の馬体重は前走からプラス10キロで500キロちょうど。しかし、これも計算の上だった。
「こちらに来て、僕の感覚の中で少し細いと感じました。なので意図的にプラス体重にしました。これ以上になると太いでしょうけど、今回くらいが適性体重だと思います」
仕上げは抜かりがない。あとはどのような競馬をするかだけだ。
「出なかったら後ろから行って良い、これまでのように出遅れているのに、押していかなくて良いからと、弘平には指示をしました」
その指示で松山騎手のプレッシャーも緩和されたのか、スタートが決まってハナを切った。
「(3コーナーまで)少し離して逃げていましたし、3コーナーで勝ったと思いました。あの形なら
ダノンレジェンドに差されないと思いましたしね」
と小野師が言うように、直線では追ってくる
ダノンレジェンドを寄せ付けず、鮮やかに逃げ切った。完勝だった。
必然的にこの後のレースが気になってくる。
「今日(11/5)、正式に決まりました。次走は
チャンピオンズC(GI)です」
小野師はきっぱりと言った。
「
フェブラリーS(GI)を勝つためには、1800mは経験させておきたいんです。この条件で走れないと、東京のマイルで勝負はできないですからね。このまま放牧に出さずに厩舎で調整してレースに臨みます。
根岸S(GIII)だと
フェブラリーSまで間隔がないですし、
チャンピオンズCから
フェブラリーSに直行します」
チャンピオンズCから
フェブラリーSというローテーションが組まれた理由を、小野師は説明してくれた。
「天性のスピードがあるので、皆、1200の馬だと思っているようですけど、体もゆるくて胴伸びのある体型なので、距離は長くても大丈夫だなと。今年の
フェブラリーSはインで詰まって詰まって、しかもメンバーも弱いわけではないですし、それで勝ち馬からコンマ5秒ですから。それに揉まれても平気でした。あのレース振りからも、距離は全く問題ないと思います」
フェブラリーSを勝つために1800mを経験させるとしながらも、距離延長にも不安はなく、
チャンピオンズCにも「手応えを感じている」と話す小野師の表情は引き締まっていた。
この後2戦、ダート路線の王道を進む牝馬
コーリンベリーに注目したい。
(取材・写真:佐々木祥恵)