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京都競馬場と半世紀 ゆかりの喫茶店主感慨

  • 2020年11月02日(月) 08時01分
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 数多くのスターホースを生んできた京都競馬場(京都市伏見区)が、11月1日の開催を最後に長期の大規模改修に入る。競馬場近くにある喫茶店「ポニー」は、半世紀前のオープン当初と変わらぬ姿で営業を続ける。店主や地元の常連客が見つめてきたのは、競馬場との関わりの中で移ろう街の姿だ。


 カウンター席の右隣にいたのは近所に住む服部直夫(58)さん。実家の生花店は長年にわたり、京都競馬場のG?レースで贈呈用の花束を納めてきた。「ディープインパクトが三冠馬になった05年なんて、ポニーに客が入りきらず行列ができたほど」と振り返る。

 レジャーの多様化やインターネット投票の発達に伴い、京都競馬場を訪れる人の数は1995年の約380万人をピークに減少を続ける。2011年に京阪淀駅が高架化されたことで駅周辺の人出はさらに激減した。今年は新型コロナの影響で京都競馬場への入場が制限された上、11月1日の開催を最後に長期の開催休止に入る。服部さんは「淀に来る人はもっと減るだろうね」とつぶやく。

 店主の松島真美子さん(70)によると、ポニーの創業は60年代中頃。騎手や調教師として活躍した父が亡くなり、母石井トミさんが女手一つで子どもを育てるために店を開いた。繁忙期は夜遅くまで営業し、高校生だった松島さんも学校から帰ると店を手伝った。

 オープンした当時は競馬場内に厩舎があり、騎手や調教師が来店することも珍しくなかった。天才として名をはせた福永洋一さんもその一人。この日、ポニーから目と鼻の先で行われる菊花賞では、息子の祐一騎手がコントレイルにまたがりクラシック三冠に挑むことになっていた。

 松島さんは「コロナに苦しめられた異常な年だからこそ、スターホースが生まれるとうれしいね。鞍上が福永騎手ならなおさら」と胸を躍らせる。そして午後3時40分、店内のテレビからファンファーレが響いた瞬間-。テーブル席の客からピラフの注文が入り、松島さんはカウンター奥の厨房に姿を消した。

 コントレイルはファンの思いを背にターフを駆け、最後の直線、ライバルとのたたき合いを制した。常連たちは偉業を讃えるのもそこそこに、次週の予想談議に花を咲かせ始めた。肝心の場面を見逃した松島さんはというと、苦笑いを浮かべて「先週、牝馬のデアリングタクトが三冠を達成したばかり。京都競馬場とお別れする特別な年に奇跡が起きたね」
ネタ元のURL
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/394937

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