レーヌミノルの優勝で幕を閉じた今年の
桜花賞、本田厩舎にとっては初のG1勝利となり大いに沸き上がった。
担当の中井助手の男泣きも印象深い。レース前から「かみ合えば勝ち負け」と8番人気の低評価に反発していた師の言葉通り、ようやく実力を発揮できた安堵(あんど)感もあったのだろう。
表彰式が終わり歓喜の輪がほどけた時、中井助手から「一緒に撮ってください」と声をかけられた。誰と?と思うと胸ポケットから一枚の馬の写真を取り出し「彼女と。
フミノイマージンです」。
同馬は12年の
札幌記念など重賞4勝を挙げたが、13年、
ヴィクトリアマイルでレース中に故障を発生、予後不良となった。
厩舎には蹄鉄とたてがみが遺(のこ)された。
栗東トレセン所属だった多くの馬は、兵庫県の妙光院にその蹄鉄とたてがみを納め、供養される。中井助手は師に頼み、たてがみの一部を形見として譲り受けた。以来、レースに行く時は必ずお守りとして懐に忍ばせている。
桜花賞のレース後、太宰騎手が祝いに来た。言葉はないが、引き手を持つ中井助手はお守りに手を当て気持ちを伝える、太宰騎手も「分かっている」とうなずき返す。
フミノイマージンの主戦として、彼も形見を譲り受けた一人だ。
さて、激闘を制した
レーヌミノルは13日、プールで調整していた。「これもイマージンに教えてもらったことなんです。水に触れさせると
リラックスするのかカイ食いが良くなることが多いんです」と晴れやかな笑顔をのぞかせた。
次走はレース間隔の短いNHKマイルCか、あるいは距離への対応が鍵となる
オークスか。いずれに向かうにせよ、桜の女王となったレーヌにはこれまで以上の注目が集まりそうだ。
仕上げ人は形見を胸に、次なる大舞台へ思いをはせている。(写真と文 デイリースポーツ・石湯恒介)
提供:デイリースポーツ