「新潟の直線1000メートルはホント特殊だからな」
こう口にする関係者は数多い。
JRAでは唯一コーナーのない競馬だから、確かにその特異性は他のどのコースよりも抜きんでている。だからこそ、直線1000メートルでしか走らない馬も出てくるし、逆に他のコースでどんなに実績があっても、この舞台では不可解な負け方をしてしまう馬もまた出てくる。
先日、とある馬の様子から、この直線1000メートルの独自性を改めてうかがい知ることができた。その馬とは今年5月の韋駄天Sでデビュー22戦目にして初めて“直千”を使った
フィドゥーシア。そのレースぶりはアッサリ先手を奪って、そのまま押し切る、高い適性を示す内容だったが、それ以上に興味深かったのはレース翌週の様子だ。
「さすがに直線競馬は普段と違う筋肉を使うみたいやな。見てみい。いつもと違って、首がうまく曲げられないみたいで、カイバを食べるのに苦労しとるやろ」(吉田キュウ務員)
馬房を見ると、確かに首を上手に使えず、食べるのに四苦八苦している
フィドゥーシアの姿がそこにあった。他のどんなレースを使っても、こういう状況にはならないそう。「直千の特殊性」を如実に物語る“物証”と言えようか。
そんな特殊な舞台だからこそ、狙うべきは過去に実績を残している馬。適性の高さが証明されているのはもちろん、送り出すほうも“ここしかない”意気込みで臨むケースが多く、仕上げに関する
モチベーションも高い。そこで坂路野郎が今年のGIIIアイビスサマーダッシュ(30日=新潟芝直線1000メートル)で穴馬として注目しているのは
レッドラウダだ。
「早いうちは1200メートルでも対応できてましたけど、最近、好走しているのは1000メートルオンリーですからね。僕にとっては、もう一頭の担当馬
クリソライトの
ダイオライト記念(3連覇中)と同じくらい、
レッドラウダの
アイビスSDは年イチで気合が入るレースですよ」とは平井助手。
過去の直千成績は2、1、5、3着で掲示板率100%。しかも、そのほとんどが内枠という不利な状況から着順をまとめたものだから適性の高さは疑いようがない。クラス再編成で1000万下に降級しながらも、平井助手いわく「この重賞を使うつもりで、みっちり仕上げてきました」。外枠でも引こうものなら“2階級特進”の激走Vがあっても驚けない。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ