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優駿の仔の未来

  • 2021年05月04日(火) 13時21分
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競走馬の中には名前のない馬がいる。さまざまな事情から出走するに至らず引退する場合だ。

あるのは母親の名と生まれた年の数字。昨年の牝馬3冠の子が4年後に生まれたなら「デアリングタクト2025」といった具合になる

▼流星の貴公子テンポイントを「幽霊の子」と書いたのは作家石川喬司さんだった。祖母クモワカは伝染性貧血のため殺処分命令を受けるが、関係者がかくまい、後に誤診と判明する。裁判闘争で命令取り消しと血統登録が認められ、生まれたのがテンポイントの母ワカクモ。命令が実行されたなら、寺山修司が「叙事詩と抒情詩」に例えた天馬トウショウボーイとの名勝負はなかった

▼2016年生まれの軽種馬6906頭のうち競走馬登録されたのは6476頭。残りは引退馬同様に乗用や繁殖用などとなる

「生かすも殺すも人間の都合次第でいいのか」。24年前に引退馬の「里親」制度を創設した「引退馬協会」の沼田恭子さんの思いだ。そこには「ダメな馬なんていない」という夫和馬さんの生前の願いが息づく(「生きているだけでいい!」講談社)

▼近年は引退馬への関心も高まり、日本中央競馬会も支援事業に乗り出す。石川さんは骨折したテンポイントの悲劇について「競馬はうしろめたさをともなった文化」と書いた。生産牧場は出産ピークを迎えている。優駿(ゆうしゅん)の仔(こ)のそれぞれに続く地平線に光あれ。
ネタ元のURL
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/540223

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