「ダービーデー」にファンが2年ぶりに戻ってきた。有料入場者は4367人。例年同様に東京競馬場の最寄り駅の府中競馬正門前駅、府中本町駅から続く連絡通路には出走全頭の写真と馬名、勝負服が描かれたペナントが天井からつるされ、場内も「ダービーデー」の装飾が施された。門の前には開門時間前からファンが列をつくり、ゲートをくぐると、手の消毒と検温を終え、おのおのにとっての特別な日が始まっていく。
昨春はなかった観客の姿。スタンドの指定席当選者だけが入場できるが、どの競馬場も自然とスタンド屋外の1、2階席、パドックに人影ができる。昼休みのダービー騎乗騎手紹介も2年ぶりにファンの前で行われた。パドックでは拍手を送る人、カメラのレンズを向ける人、思い思いにイベントを楽しむ姿が見られた。音声や映像では伝わらない競馬場の空気、熱気、馬と騎手の呼吸音、目前で繰り広げられる白熱のレースをみんなが求めている。歌手広瀬香美による君が代独唱後の午後3時40分。発走前のファンファーレが響き渡り、精いっぱいの手拍子が17頭、そして騎手に送られた。
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、どのレースもスタンドが揺れるような大歓声はない。その代わりに拍手が勝者と敗者を包み込む。パドックから券売機へ、券売機からコースへ。この日特有の人垣をかき分けて進まなければならない殺伐とした雰囲気ではなく、高倍率のプラチナチケットを手にし、「ダービーデー」を心の底から楽しむファンの笑顔が確認できた。
ダービーが行われる東京競馬場は大きい。巨大なスタンド、子どもが遊べる遊具がそろい、きれいに整備された内馬場、充実したグッズのそろう土産物店(ターフィーショップ)、競馬資料館、最大20万人を集めることも可能で、世界に類を見ないエンターテインメントの箱物だ。再びこの箱が人の姿で埋まる日が来るのか、それとも新しい観戦用式が定着すると施設そのものも今後は形が変わっていくべきなのか。
ワクチン接種の進む英国は6月のロイヤルアスコット開催(15~19日の5日間)で各日1万2000人の入場が認められることになった。昨年から一進一退が続く新型コロナウイルスとの戦いは、東京オリンピック(五輪)を目前に控えても先の見えない状況が続く。また来年も無事にここでダービーが行われ、願わくば、ホースマンの夢がかなう瞬間を見たい。大勢のファンとともに。
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