調教過程にスポットを当てた先週の当欄では、
アメリカJCC(1着)時に比べて攻め切れない
タンタアレグリアの不安を指摘。「むしろ従来パターン(10日競馬)を変えて早めに入厩した陣営の意気込みが怖い」と記した
ルージュバックを
オールカマーの主役に抜てきし、久々に会心のヒット(◎→○→▲)となった。
それに気を良くしたわけではないが、実は今週も調教過程の変化に注目する馬がいる。史上わずか2頭(
サクラバクシンオー、
ロードカナロア)の偉業=GI
スプリンターズS連覇にチャレンジする昨年覇者
レッドファルクスである。
「中山千二は決してベストの条件ではない」
送り出す
尾関知人調教師がこう語る理由は単純だ。同馬のウイークポイントは左トモ。それが原因で2013年の未勝利戦(中山芝8ハロン)以降、2年以上体の左側に、より負担のかかる右回り競馬を封印してきた。昨年Vも同馬を知る者にとっては“うれしい誤算”だったろう。
一方で指揮官は今回こんな言葉も口にする。
「昨年は春から秋にかけてグンと成長したが、今年は変わりなく高いレベルで推移している」
この発言は昨年並みのパフォーマンスを保証するものだろうが、内心「本当か?」とも思う。疑うのは調教内容が確実に変化したためだ。
「現状も右回りは極力続けて使いたくない」と師が話す通り、いまだ左回りがベター。ゆえに春当初は調教でも右回り&小回りの南ウッドでのハードワークは避けてきた。だからこそ、である。衝撃だったのは同コース6ハロン80.9秒のスパルタ追い切りを課した1週前。“高値安定”どころではない。馬体は一層の完成を迎えた、が当方の見立てである。
もっとも昨年が6着まで0秒1差の激戦。加えてベスト舞台のはずの
高松宮記念で勝ち切れなかった(3着)ことを踏まえれば楽観は禁物か。むしろ同馬の今回の焦点はデキ以上に枠順、馬場状態。これが当方のもうひとつの見立てである。何を隠そう、ともに3着に終わった
高松宮記念、
安田記念の枠順確定後、某スタッフが何度か漏らしたセリフが印象的だ。
「もっと外が良かった」
勝利した
CBC賞、
スプリンターズS、
京王杯SCはくしくもすべてオレンジ帽(7枠)。これが意味するものは、スムーズな「外差し」こそ同馬の必勝パターンであるということ。枠、馬場を含めて…昨年覇者がさらに上げたギアを駆使できる展開になるのか。偉業達成の最大のカギはおそらくここにある。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ