存命最高齢ダービー馬。今年、31歳を迎えたウイニングチケットは北海道浦河町の「うらかわ優駿ビレッジ アエル」で余生を送っている。
ゆっくりで、穏やかな時間がウイニングチケットの周りを流れている。今から28年前の93年。「3強」とうたわれたビワハヤヒデ、ナリタタイシンを打ち負かして第60回ダービーを勝った。
当時、しのぎを削った2頭は昨年、相次いで天国に旅立った。存命する最高齢のダービー馬。バブル期の競馬を盛り上げた名馬は30歳を過ぎてもなお「うらかわ優駿ビレッジ アエル」で元気な姿を見せている。
31歳。さすがに背中は垂れたが、毛づやの良さが年齢を忘れさせる。功労馬たちの世話をする太田篤志さんは「大きな病気をしたことがありませんし、獣医さんを呼んだこともないと思います。緩やかに年を取っている。どなたにも見てもらえば安心してもらえます」とほほ笑む。日中は放牧地で1頭の小さなポニーと平穏に過ごす。年齢からくる“おじいちゃん感”は想像していたよりも小さい。
寝転がっていても、反動をつけずにワンステップで起き上がる。カイバも水でふやかして食べやすくする必要もないという。毎朝、午前6時半に食事を済ませ、7時には放牧地へ。
太田さんは「G1を勝った馬ですし、はっきり意思表示ができます。でも、普段は小柄な女性でも引っ張れるし、手が掛かりません」と話す。少しでも放牧に出る時間がずれると機嫌を損ねる“王様気質”はあっても、日常はおおらかだ。札幌から車で約4時間。遠方から顔を拝みにきたファンは老け込まない名馬の姿に、多くが笑顔になる。
今も昔も、愛されている。オールドファンから毎年、年が明ければ年賀状、誕生日が近づけば好物のニンジンが山ほど届く。併設される宿泊施設にはファンが撮影した写真、寄贈した現役時代のグッズも展示されたギャラリーが今春、オープンした。時を同じくして、人気アニメから派生したスマホアプリ「ウマ娘」に登場したことで、現役時代を知らない新規層を知らぬ間に開拓していた。
「長生きしているといいこともあるんですね。何が幸せか分からないけど、チケットは一番いい生活をできているんじゃないかなと思います」
知ってか知らずか、レイパパレの母母父としても再び脚光を浴びた。受ける愛情は年々増えている。今は健康そのもの。これからも元気な姿をファンに見せ続けてくれそうだ。
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