岩手競馬・斎藤雄一厩舎で厩務員を務める西野沙織さん(30)。昨年8月に引退した元担当馬のカティサンダ(牡8)を家族の協力も得ながら、盛岡市内の祖母の家で世話している。その道のりは決して平たんではなかった。
「私は初めて担当した馬を絶対に引き取ると決めていたんです。そのことは転厩などで難しくなりましたが、それでも自分の担当した馬は出来ることはしてあげたいと思っていました。今までに引退した私の担当馬はみんな、運良く行き先がありました。しかし、カティサンダは乗馬に向かない気性に加えて、骨折で3カ月は療養が必要と悪条件がそろっていて、殺処分は免れないなと……。それでも私は人懐っこく、大好きだったカティを“あきらめる”ことができなくて、齋藤調教師がオーナーに相談してくださいました。すると、吉田オーナーも『僕もできるだけ殺処分はしたくない。お金はいらない。ありがとう」と、快諾してくださったんです。本当にうれしかったですね。それから大急ぎで祖母の家の空き地に厩舎作りなどを行って、無事引き取ることができたんです」
西野さんは競馬とは縁がないまま大学卒業後はスポーツ用品店の販売員をしていた。ところが4年前、盛岡競馬場で走ってる馬に一目惚れ。自分の進み道を決めて、翌18年には厩務員となった。
今年3月31日には同じく厩務員をしている直樹さん(35)と結婚。母、祖母にも「とても心強い味方になってくれています」と感謝を口にする。
「実は当初、カティを引き取ることに最も反対したのは彼でした。厩務員をする以上、馬との関係は割り切らなければいけない、でも、どうしてもカティを“あきらめる”ことができなくて……。最終的には彼も引き取ることを認めてくれたんです。今ではすごく協力してくれて、心強い味方になってくれてます」
引き取って9カ月。周囲のサポートもあって、どうにかこうにか乗り越えてきた。ただ、苦労は決して絶えない。
「引退馬のその後」は簡単には解決できない問題だ。近年になって引退馬支援活動も広がっているが、決して十分ではない。西野さんも「難しい問題だと思っています」と口にする。
(後編に続く)
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