この季節の格言としては「夏は牝馬」が有名だが「夏は小兵」という事実は、あまり浸透していない。
出走馬の地力レベルをそろえるサンプルとして古馬1勝クラス(旧500万条件)芝5~7F戦を1~2月と7~8月で比べてみよう。夏は10年以降、冬はその半年後の11年以降のデータを整理すると、夏の勝ち馬358頭の平均馬体重は463・8キロ。一方、冬の勝ち馬139頭は475・8キロ。夏が12キロほど軽い。出走全馬の平均体重は夏461・4キロ、冬464・0キロなので、冬の方が全体的に3キロほど重いが、勝ち馬の平均が12キロ違う理由は別に考えなければならない。念のため統計的検討も行ったが明確な有意差を得た。
競走馬を対象に、この現象を突き詰めた研究はまだないが、似た現象を説明する生態学の知見がある。高校生物でも学ぶ「ベルクマンの法則」だ。「同系動物の生息環境とサイズの関係は、寒冷地ほど大型、暑熱地ほど小型」。典型例によく挙げられるのがクマだ。北極圏のホッキョクグマ、北海道のヒグマ、本州~九州のツキノワグマ、東南アジアのマレーグマ。この順番に大型→小型と並ぶ。
動物の熱産生量は体重に比例する。体重は体積に比例するのでサイズの3乗に従う。熱放散量は体表面積に比例するのでサイズの2乗に従う。放熱効率は熱放散量を熱産生量で割ったものだ。2乗を3乗で割ると1乗分だけ分母に残る。従って、サイズが小さいほど分母が小さくなって放熱効率は上がる。逆にサイズが大きいと放熱が進まず、体内に熱がため込まれる。この効果が、動物の生息域の気温とリンクする。
競走馬でもこの原理は変わらない。暑い季節は小兵の方が熱交換の効率において物理的に有利だ。ラジオNIKKEI賞出走馬ではシュバリエローズが前走440キロと最も小兵。ジュンブルースカイが442キロで続く。500キロ前後が多くを占めるこの一戦で、小兵のアドバンテージは多少なりとも有利に働くだろう。
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