帝王賞で鮮やかなイン突きを決めた姿を見て、とんでもない鉄人だと認識させられた。松山弘平騎手(31)=栗東・フリー=は6月27日の阪神5Rの返し馬で、暴れた馬に襲われて負傷。だがその3日後、テーオーケインズでビッグタイトルをつかんだ。すぐに乗れたのだから軽傷だったと思う方もいるかもしれないが、実はそうではない。
診断名は口唇部挫創。馬のひづめが口を直撃した影響は甚大だった。大量に出血した上に、前歯が根元に近い部分で折れてしまった。激痛が続き、普通なら3日後の騎乗は無理だったはず。ただ、本人はケガをした日から
「帝王賞は乗ります」と頑として譲らなかった。口だから、直接騎乗に影響がないとはいえ、それで結果も出すのだから、恐るべき精神力だ。
思えば、昨春に落馬負傷して仙骨を骨折した時も、本来なら1カ月は掛かりそうなのに、1週間休んだだけで戦線に復帰。騎乗できるか心配されたオークスのデアリングタクトも勝利へと導いた。
そもそも松山は休むことを嫌う。毎週、全レースに騎乗したいと本気で思っている。「乗っていないと不安になるんですよ。特に自分が乗る予定だった馬に勝たれるのが本当に嫌。負けず嫌いなんですかね」。先週のプロキオンSもゲリラ雷雨に動じることなく、穴を開けた。そのハートの強さが彼の原動力。丈夫な身体だけでなく、心も鋼のように硬い。(黒柳勝博)
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