海外遠征の際、馬に打つワクチンについてお話をしたいと思います。
遠征する国の衛生条件によって接種するワクチンの違いはありますが、基本的に馬が受けるワクチンは2種類あります。1つ目はインフルエンザワクチン、2つ目は日本脳炎ワクチンです。出国の半年~2週間前までに受けることが義務付けられています。
個体差にもよりますが、ワクチンの副反応で人間同様に発熱をする馬もいるので、遠征間近で接種する場合、関係者は副反応の有無や程度を気にします。また最近では馬鼻肺炎(馬ヘルペスウイルスの一種)のワクチン接種を求める国も増えてきているそうです。
私が米国遠征に同行した際には、ウエストナイルウイルスという珍しい感染症のワクチンについて知りました。現地獣医師の話では副反応による発熱が起こりやすいワクチンとの事でしたが、同行した馬には接種する必要がなかったので安心しました。
ウエストナイルワクチンの接種については、州などによって接種条件が違いますが、滞在厩舎から半径60キロ圏内で発症が認められた場合、直ちに接種する必要があります。地域によってワクチンの種類や規定について大きく違いがあることに驚きました。
新型コロナウイルスの拡大が続けば、いずれは馬のワクチン接種にも影響をもたらすことがあるかもしれません。今後人馬のワクチンがより良い発展をしてくれればと願うばかりです。秋は数多くの日本馬が海外遠征をすると報道されていますので、遠征している馬はみんなワクチン接種を受けたのだと思ってもらえたらと思います(笑い)。(レースホースコーディネーター)
安藤裕(あんどう・ひろし) 1979年(昭54)10月19日、東京都生まれ。馬主だった父の影響で少年時代から競馬に親しむ。98年に渡英、J・ゴスデン厩舎で馬の基礎を学ぶ。その後は騎手としてアメリカ、カナダなどで騎乗したが、けがで引退し、08年に帰国。プロ野球の横浜ベイスターズで外国人選手の通訳となる。11年に株式会社FELESを設立。厩舎や牧場の調教情報を管理するシステムを取り扱うほか、外国人騎手の通訳や、海外に遠征する日本馬のサポートなど、レースホース・コーディネーターとして幅広く活躍している。ニックネームはハッピー。
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