GI(JpnIも含む、以下同)最多勝記録のかかった引退レースで、
コパノリッキーは完璧な逃げ切りを見せた。
逃げ宣言の
コパノリッキーに対して、他の有力馬がどう出るのか。逃げる可能性のあった中で
インカンテーションは行く気を見せず、競ってきたのは、ひとつ内枠の
ケイティブレイブだった。近走控えて結果を出していたが、これといった逃げ馬もいないメンバーだけにみずからペースをつくろうとも考えたのだろう。しかし最初のゴール板手前で
コパノリッキーがハナをとりきった。
競り合ったぶん、2F目が11秒1と速くなり、最初の3F通過が35秒5で、1000m通過は61秒3。近年の大井2000mの古馬GI(
帝王賞、
東京大賞典、
JBCクラシック)では62秒台前半が平均的なペース。この舞台で1000m通過が61秒台だったのは2年前の
東京大賞典以来のこと。そのときも逃げたのは
コパノリッキーで、まったく同じ61秒3で1000mを通過。しかしそのときは直線失速し、勝った
サウンドトゥルーから1秒5も遅れて4着に沈んでいた。違いは、1000mを過ぎてからのペースにある。2年前の
東京大賞典では
ホッコータルマエに半馬身ほどの差でぴたりと付かれて突かれる形になって、6F目11秒9、7F目12秒0と、勝負どころを迎える前にペースアップせざるをえず、息の入らない流れになってしまった。
しかし今回は6F目12秒9、7F目12秒9とペースを落として息を入れることができ、上り3Fは、12.6- 11.7- 12.8= 37秒1でまとめた。後続にしつこくからまれなかったのは幸運というべきで、レース半ばで息を入れることができ、直線を向いたところでペースアップ(11秒7のところ)して後続を突き放すという、逃げ馬としては完璧なレースになった。
中団追走から上り3F=36秒5という末脚を存分に発揮した
サウンドトゥルーだったが、ゴールで
コパノリッキーは3馬身も前にいた。
ケイティブレイブがスタート後の直線でもう少し突っ張るか、もしくは向正面で突いていれば、まさに
サウンドトゥルーの末脚が生きる展開となったであろうが、もしそうしていれば、
コパノリッキーもろとも
ケイティブレイブも共倒れとなっていただろう。そうでなくとも
ケイティブレイブは最後に脚が上がって2着の
サウンドトゥルーから2馬身半差。いかに
コパノリッキーが完璧な逃げ切りで強いレースをしたかがわかる。
コパノリッキーが今年のJBCでは、クラシックではなくス
プリントに出走したことでは、賛否があった。いや、否の意見のほうが多かったというべきか。
南部杯を制して
ホッコータルマエのGI・10勝の記録に並び、その記録を更新するには、引退が決まっているだけに、秋3戦のうちどれかひとつを勝たなければならない。7歳になって、過去に経験のない1200m戦ということでは、残り3つのうちの1つを捨てに行くのか、と思われても仕方ない。しかし陣営は、JBCを捨て石にして、最後に残された2つを獲りに行った。そこには、まだ勝っていない
チャンピオンズCを勝ちたいという想いもあっただろう。
結果的に、
JBCスプリントでもスピード競馬への適応を見せ、よもや勝ったかという惜しい2着。そこでのスピード競馬は貴重な経験となった。過去3回とも惨敗だった
チャンピオンズCでは、ゴール前まで逃げ粘ってクビ、クビというきわどい決着の3着。そして引退レースとなった
東京大賞典での鮮やかなまでの逃げ切りとなった。
個人的に
コパノリッキーのベストパフォーマンスを挙げるとすれば、2014年盛岡の
JBCクラシック。スタートして行く馬がないと見た田辺騎手が迷わずハナを切り、スピードの出やすい馬場だったとはいえ、2分0秒8というコースレコードでの逃げ切り勝ち。2着の
クリソライトに3馬身差をつけ、さらに
ワンダーアキュート、
ホッコータルマエらも寄せ付けなかった。今回、年齢を重ねて衰えつつあったスピードを、
JBCスプリントを使うことで再び呼び起こさせたと言ったら結果論に過ぎるだろうか。