凱旋門賞には、過去にのべ27頭の日本馬が挑戦してきた。その中で最も優勝に近づいたのが2012年のオルフェーヴル。同馬は翌年も2着。管理した池江泰寿調教師(52)は今も変わらず、戴冠への野望を抱き続けている。
今年で100回の節目を迎える凱旋門賞だが、いまだ地元の欧州勢以外が勝ったことはない。その中で限りなく頂点へ近づいたのが12年のオルフェーヴルだった。
4コーナー過ぎ。池江調教師は「こんなに簡単に勝てるのかな」と思ったという。他馬の手応えが怪しくなる中、持ったままで位置を上げていった。直線半ばでアッという間に先頭に立ち、後続を突き放していく。しかしラスト100メートル。内ラチ沿いにモタれ減速すると、ソレミアに首差かわされた。「これがヨーロッパの厚い壁なのかなと…」。ホテルに戻ると涙がこぼれた。競馬で悔し泣きをしたのは、この時だけだ。
特別な舞台だった。小学生の頃、日本馬で初めて出走したスピードシンボリの写真を見たことで存在を知り、父の池江泰郎元調教師からは「世界一のレースや」と聞かされてきた。英国で研修中だった96年に初めて現地で体感。帰国後もタイミングが合えば観戦に向かった。「(凱旋門賞ウィークには)ヨーロッパの各カテゴリーのチャンピオンが見れる。どういう仕上げをした馬が勝つのかなど勉強するために行っていました」と振り返る。
オルフェーヴルは翌13年も2着、サトノダイヤモンドなど2頭を送り込んだ17年は15、16着。06年には泰郎氏が管理するディープインパクトの遠征も管理馬を帯同させ、そばで見た。そのたびに、とてつもなく高い欧州の壁を思い知った。「彼らは何千年もの間、馬を乗り慣らしている騎馬民族。イギリスにいた時も彼らにはかなわないなという部分があった。そんな歴史がつながっていると、ひしひしと感じます」
今年はフォワ賞を制したディープボンド、今までにない直前輸送で臨むクロノジェネシスが参戦する。池江師は「今年のディープボンドを見ても、日本の馬はさらに進化して、強くなっていますよ。(直前輸送は)結果が出れば、新しい一つのスタンダードになると思います」と期待する一方、自身の情熱も燃やし続けている。「先人たちが挑戦し続けた意志を引き継がなければいけないと思っています」。
悲願である凱旋門賞制覇へ向け、今後も挑戦を続けていく。(山本 武志)
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