2〜3歳の早い時期に卓越した走りを見せたとしても、その後の成長がなければ、いずれは他馬に凌駕され、埋没してしまう。3歳時に
安田記念で3着に大健闘したころは「怪物」と言われながらも、古馬になってからは一度も勝てなかった
スピードワールドは、その典型だった。
こういった「早熟」と対義語的に使われるのが「晩成」。
中山記念に担当馬
ヴィブロスを出走させる友道キュウ舎の安田助手は「この血統の一番の魅力は、年を重ねてからの成長力ですよね」と胸を張る。
昨年の
ジャパンCで5歳にして初のGI制覇を成し遂げた半兄の
シュヴァルグラン、同じく5歳でGI
ヴィクトリアマイル連覇を飾った全姉
ヴィルシーナ…。
確かに、この血統は古馬になってからも成長が止まらない、奥行きの深さがある。
ヴィブロスの場合は、3歳時に
秋華賞、4歳時に
ドバイターフと、すでにGIを2勝しているとはいえ、この血統の“キー年齢”5歳を迎え、やはり、しっかりとした成長の跡が見て取れるという。
「背が伸びて、骨格も大きくなって、さらに肉付きも良くなりました。顔つきも、だいぶ精悍になった感じがしますね。もうデビュー当初の細身の牝馬という雰囲気は、どこにもない。まあ輸送もあるので、そこまで大きなプラス体重にはならないでしょうけど、今の時点では450キロ(休養前の
エリザベス女王杯5着時は436キロ)ありますから」(安田助手)
2〜3歳時には「400キロを切ってしまうのでは…」という不安とも闘っていた馬とは思えないほどの変貌ぶり。実際にボリュームアップされた馬体を見ても、その“発育”ぶりは明らかだ。
「休み明けだし、この後はドバイ(ターフ)もあるので、中身がしっかり詰まってくるのは次になるとは思いますけど、ある程度は動ける感触は持ってますよ。気性的にも前向きなので、距離も1800〜2000メートルくらいがいいんでしょう」
あくまで最大目標は連覇のかかる
ドバイターフだとしても…。この血統の“旬”ともいえる5歳を迎え、確かな成長が見て取れる今の
ヴィブロスなら、少なくとも昨年(5着)以上の結果は間違いなかろう。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ