マルシュロレーヌがMarche Lorraineになった日

ブリーダーズカップ・ディスタフ
アメリカ競馬のダート牝馬路線の1年を締め括る最高峰の競走でその年のアメリカの最強女王決定戦の位置付け
出走11頭中前走G?勝ちが4頭。G?2着が2頭。G?勝ちが2頭、G?2着、G?勝ちがそれぞれ1頭。

”They are off!”
牝馬ダート頂上決戦の開幕を実況が告げた。レースは向こう正面、実況が半マイル45秒を切る「火の出るような」超ハイペースであることを告げたところだった。
前日のジュヴェナイル。ハイペースの中後方の位置取りを強いられたジャスパーグレイトはその位置を上げることができないままゴールした。
2時間半前に行われたダートマイル。ディスタフと同じ半マイル45秒を切るペースを好位から追いかけていったピンシャンとジャスパープリンスは3コーナー、ほぼ同時に糸が切れたように後退していった。

彼女は後方3番手にいた。しかも先頭2番手をひた走るのはRPRトップタイ、レトルースカとプライベートミッションの2頭だ。マルシュロレーヌが「スーッ」と前に進出している。

父オルフェーヴルやその兄ドリームジャーニーのように「ギュイィィン」と唸りを上げるのではない。
同じステイゴールド系の超個性派ゴールドシップのように「ドドドド」と押し寄せるでもない。
鞍上オイシン・マーフィー騎手の手もそれほどせわしなく動いていない。

マルシュロレーヌは3，4コーナーを文字通り「スーーッ」と上がっていった…。
気が付けばレトルースカをかわし切りマルシュロレーヌは4コーナー、先頭に立っていた、先頭に…

”Marche Lorraine is trying for the Giant Upset!”
「マルシュロレーヌがとんでもない大番狂わせを演じようとしている！」実況が驚きを隠せない様子でマルシュロレーヌにクローズアップする。
最後は粘るマルシュロレーヌと追うダンバーロードが全く鼻面を合わせたところがゴール板だった。

”Oooooh!!! definitely close!!!!!”　実況が「まったく並んでゴールイン！」と告げた。

マルシュロレーヌ、いや「Marche Lorraine」が日本馬として本場アメリカのダートG?、しかも牝馬最高峰のブリーダーズカップ・ディスタフを制した瞬間だった。

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