競走馬の世話を担当する厩務員は、茨城県美浦村と滋賀県栗東市にあるトレーニングセンターで働いている。栗東市のトレセンに何度も通い、関係者から話を聞くうちに、1枚の案内文にたどり着いた。
原則全員が給付対象」「満額の可能性が高い」といった文言が並ぶこの案内文は、持続化給付金の申請を促していた。作成したのはある税理士が代表を務める法人。税理士は馬主でもあり、競馬界では良く知られた存在だった。誘いに乗った人々には次々と100万円が振り込まれ、税理士側は受給額の7〜10%を「成功報酬」として受け取っていた。
簡単に受給できた背景には、厩務員特有の事情がある。彼らの収入源は、雇用主である調教師からの給料以外にもう一つある。担当する馬がレースに勝つと配分される賞金の一部だ。「進上金」と呼ばれ、厩務員らはこれを個人事業主として得た「事業収入」として確定申告している。
トレセンの関係者は「大きなレースに勝てば、進上金が数百万円に上ることもあるが、負ければゼロ」と明かす。浮き沈みが激しいため、持続化給付金の支給要件である「前年と比べ50%以上減収した月がある」をクリアできた。
▽調教師会、コロナの影響は「ほぼ皆無」
厩務員がコロナ禍の影響で困っていたのであれば不適切と言い切れないが、20年にJRAが主催する中央競馬は中止されなかった。それどころか、レースの実施回数は過去最多だった。
別のある税理士は、競馬関係の顧客から受給できるかどうかを尋ねられたという。「制度の趣旨から考えて、適正な受給ではない」。この税理士はそう言い切った。
厩務員による不正受給のうわさは、やがて業界団体にも届いた。20年11月、日本調教師会は、厩務員の雇用主である調教師に通達を出している。内容は「新型コロナによる経済的な影響はほぼ皆無」として、誤って受給した場合は返還するよう求めるものだ。
だが、受給状況の実態が調査されることはなかった。結果的にこの対応が傷口を広げたと言えるかもしれない。100万円を手にした人と、不正と考えて踏みとどまった人が混在する状況が続き、ネット上で問題を告発する人物も現れた。
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