「ダービーからダービーへ」を
コンセプトに、2歳新馬戦が
日本ダービー翌週(通常3回東京、3回阪神開催の開幕週)のスタートになったのが2012年のこと。その翌年には3回東京デビューの
イスラボニータと3回阪神デビューの
レッドリヴェールが2歳戦だけでなく、3歳クラシック戦線でも大活躍。早々に「中央早期デビュー」の注目度が高まった。
その後も15年
メジャーエンブレム、16年
アエロリット、昨年も
ダノンプレミアム、
ステルヴィオ、
ケイアイノーテックなどが、この初っぱな開催デビューに該当するのだから、もはや今週から始まる当開催こそ、最も熱視線を送るべき新馬戦なのかもしれない。
ひと昔前は「本格派は秋デビュー」と言われ、2歳夏にデビューするような馬は「早熟」のレッテルを貼られたものだが、それももはや過去の風潮。何よりファンにとっても、ダービーが終わって次のダービーを目指す流れは分かりやすく、POGのドラフト指名もこのタイミングで行われることが多い。ということで
JRAの推進した流れは大成功?
「正直言うと、中央場所でのデビューはやりづらいんだよな」と意外なリアクションが返ってきたのは美浦の名伯楽・藤沢和調教師からだった。
「スクーリングができないからね。若い馬は初めての場所になかなかなじめないから、ツラい面がある。だからウチの厩舎でも期待している馬なんかは(滞在競馬でスクーリングがしやすい)北海道でデビューさせるようにしているんだ」
なるほど、昨年の
オークス馬
ソウルスターリングや、現3歳の
タワーオブロンドン、
レイエンダといった有力馬は、この時期すでに入厩していながら、東京ではなく札幌デビューを選択したのにはそういった理由が…。
一方で別のある調教師からは「態勢が追いついていない」との指摘があった。2歳新馬戦のスタートが早まることは同時に3歳未勝利戦を早く終わらせることを意味する。かなり専門的な話になるが、現行だと6月1日以降に始まる抹消給付金(未勝利馬を早めに抹消することで得られる給付金)の実施を前倒しする必要性が、降級制度もなくなる来年以降はより高まるというのだ。
そういった感じで、まだ思案の余地は残す“ダービー〜ダービー”だが、とにもかくにも2016年生まれのシ烈な戦いが今週末からスタートする。東京の新馬戦3鞍で最注目は日曜(3日)芝1600メートルに出走予定の藤沢和厩舎
グランアレグリア(牝=
父ディープインパクト)だろう。
母タピッツフライは米G1・2勝の良血で、入厩から約2か月にわたる豊富な乗り込みはもちろん、「牝馬で気がいいタイプだからね。初めての場所でも“まず大丈夫”って自信がある」からこそ、この時期の東京デビューには積極的ではないトレーナーを動かした。開幕週を飾るにふさわしい勝ちっぷりを見せてくれそうだ。
ちなみにPOG的に最注目の
レイデオロの半弟
ソルドラード(父
ロードカナロア、
母ラドラーダ)は「上と比べても一番コントロールが利く」、
ソウルスターリングの半妹
シェーングランツ(
父ディープインパクト、
母スタセリタ)は「日本の馬場への適性は姉以上」と、ともにトレーナーの評価はめっぽう高く、2頭とも“王道”の北海道デビューを予定。いよいよ、熱い夏が始まろうとしている。
(立川敬太)
東京スポーツ