先週(2日付)掲載のインタビューで「女性だからではなく、強くなって注目されたい」と胸の内を語った藤田菜七子が9日、21歳の誕生日を迎えた。せっかくの
バースデーは台風の影響で大荒れの天気。それでもいつも通りトレセンに姿を見せた菜七子は、普段と変わらず厩舎の仕事に打ち込んだ。そのひたむきな姿勢に、彼女の強い「決意」を感じてしまう。
冒頭のセリフからも分かるように、菜七子の負けん気の強さは相当なものだが、勝ちへの執着といえば、現在
JRA「71勝」でリーディング3位の
戸崎圭太を語らずにはいられなくなる。
2014〜16年に3年連続リーディングを獲得した彼は「リーディングは僕が一番目標にしていること。GIを勝つより、勝ち鞍を増やしたい気持ちの方が強いですね。GIを勝っても自分の中では“プラス1勝”という意識。未勝利でも500万でも、とにかく勝つと気持ちが高ぶり、勝てないと落ち込む」とブレないポリシーを教えてくれた。
さらに「これだけいい馬に乗せてもらっているからこそ、自然と湧いてくる気持ちかもしれません」と付け加えた言葉に、彼の
プライドが垣間見えた。上位のジョッキーは周囲から「いい馬に恵まれて…」と言われがちだが、その事実こそがジョッキーの実力だと戸崎圭は信じている。
「“あの人は強い馬に乗っているから勝っている”って思ったらダメだと後輩には言います。だったら自分が強い馬に乗れるようになればいい。そのために自分が何をするべきかを考えないと」
話は若干それるが、戸崎圭はどんな時も気さくに取材に応じてくれる。限られた時間の中でコメントを取らないといけない記者は、この“神対応”に何度助けられたことか。その半面、国語の先生のような模範的なコメントに物足りなさを覚えてしまうことも…。
もっと心の底に眠るドロドロした感情を知りたい。そう思って質問で揺さぶっても、彼はまったく動じない。いつもの涼しげな表情で「一つひとつの積み重ねです」「勝って喜んでくれる人の顔を見るのが幸せです」と、完璧なコメントで記者を打ちのめすのだ。
だが、彼だって人間。時には汚い言葉を吐くだろうし、ムッとすることもあるだろう。そう考え、最後の手段として次の質問をしてみた。
「リーディングを取っても、勝負どころの大きなレースでは勝てないって声に対して“この野郎!”って思わないのか?」
すると…。
「その気持ちがなければ僕はリーディングを取ってないと思いますよ!」
そう言うと爽やかな笑顔でさっそうと調教へ向かった。完敗である。いつの日か、彼の“悪〜い部分”を当コラムで紹介できるよう、記者も「勝ち」にこだわりたい。
(童顔のオッサン野郎・江川佳孝)
東京スポーツ