初年度からクラシック2冠牝馬
アーモンドアイを出し、2年目の産駒も順調に勝ち上がっている
ロードカナロア。その現役時代を知る安田隆キュウ舎の安田助手は、意外にもこんな気持ちでいたそうだ。
「
レディブラッサム(
ロードカナロアの母)の産駒はどれも気性が激しく、競馬に行く前に燃え尽きてしまうタイプが多かった。カナロアは例外的におとなしい馬でしたが、それ以外は乗り味がどれほど良くても結果が出ず…。馬は抜群だった
ディープインパクトの子(
ヴィーヴル)も競馬では走れなかった。ウチにはカナロアの産駒が十数頭も入る予定になっていたし、
レディブラッサムの血が(隔世遺伝で)出たら嫌だなと…内心は不安だったんです」
内情を知っているからこそ“半信半疑”な
ジャッジをしていたようだが、その不安は幸いにも的中せず。現代競馬に必要不可欠な豊かなスピードを持ちながら、ス
プリンターらしくない馬体をしていた
ロードカナロアの長所ばかりが産駒には遺伝している。飽和状態にある
サンデーサイレンス系との相性の良さも、父の
キングカメハメハで証明済みだけに今後も活躍馬を出し続けるはずだ。
さて、今週の競馬に話題を移せば、その
ロードカナロア産駒で安田隆キュウ舎の管理馬でもある
ケイデンスコールが
新潟2歳Sに出走してくる。しかし、この馬についても安田助手の
ジャッジは微妙。現時点での完成度がその理由のようだ。
「カナロアの若い時期のような緩さがあるだけでなく、
ハーツクライ産駒に多い、重たさみたいなものもある。前走もデビュー戦を使った上積みがまるで感じられませんでした。直線ではスタンドをずっと見てたでしょ? 走るほうに気持ちがまだ向いていないんですよ。早い時期に勝ち上がりはしましたが、血統通りの晩成タイプと思っているんです」
母の
インダクティは晩成ステイヤーとして現在も活躍している
フェイムゲームの全姉で、重賞を7勝した
バランスオブゲームの半妹。
フェイムゲームも
バランスオブゲームも3歳春までに重賞を勝っているのだから、一般的な晩成タイプのイメージとは少し異なるのだろうが、前者は8歳、後者も7歳時に重賞勝ちを飾った実績がある。本質的には早い時期に勝負できる血統ではないことだけは確かだ。
「本当に良くなってくるのは4歳秋あたりから。その考えは変わってはいないんですけどね。ただ、この中間はハミの取り方が前回までとは変わってきている。少しは走るほうに気持ちが向いてきたのかも。調教ではそう感じているんです。前走までの状況でもそれなりに結果を出すのだから、奥が深い馬なのは間違いない。この段階でどんな走りをするのかって気持ちはありますね」
ちなみに
ロードカナロアはスピード、切れなど、ありがたい身体的な武器のほかに、「出遅れ癖」という喜ばしくない特徴も伝えている。実際、
アーモンドアイ、
ステルヴィオ…。スタートが上手ではない活躍馬を容易に挙げられよう。ただし、安田助手によれば「ゲートを練習して、馬自身が納得すれば克服してくれる。同じようにゲートが悪い
エンパイアメーカー産駒のそれとは違う類いのものなんですよ」。
ケイデンスコールにしてもゲートは上手ではないが、「早めに抜け出すと気持ちも抜けてしまう馬ですから。後ろから強い馬を追いかける形のほうが現状ではいいはずなので特に気にするものではないかな」とのこと。
古馬になって…のサンプルは現段階ではもちろんないが、とりあえず出遅れ癖のある2歳時の
ロードカナロア産駒は広いコースで狙うべし――。となると
新潟2歳Sは軽視しづらい舞台だ。
(松浪大樹)
東京スポーツ