デビュー32年目。常に第一線を走り続けてきた
武豊騎手(49)=栗東・フリー。JRA4000勝の偉業達成を支えた一人が、『TAKE PHYSICAL CONDITIONING GYM』のCEOを務める理学療法士の長谷川聡トレーナー(41)だ。レジェンドが「二人三脚でやってきた」と感謝する男が、その肉体の秘密を明かした。
JRA通算3500勝を記録した2013年1月のこと。
武豊がこう漏らした。「“次は4000勝を目指す”って言ったら、みんな間があいて“えっ?”って顔をする。失礼だよねぇ」。当時、43歳10カ月。周りが驚くのも無理はなかった。だが、それから約5年8カ月をかけて、レジェンドは有言実行を果たした。
サポートを続けてきた長谷川聡トレーナーは「骨折が原因で腰痛がひどくなったんです。股関節の柔軟性、腰や背中の使い方を徹底的にトレーニングした」と、サポートを始めるきっかけとなった10年
毎日杯の落馬事故後のリハビリを振り返る。そして、「トレーニングを経てすごく股関節が柔らかくなり、体幹も強くなった。上がブレないから股関節で吸収できて馬にかかる負荷も少なくなる。ユタカさんが特別優れているのは柔らかさです」と明かした。
体のケアとトレーニングはほぼ毎日。海外遠征にも同行する。「長く見てもらっているからね。こちらの性格もよく理解してくれている」とユタカ。長谷川さんは
武豊の性格をこう分析する。「メンタルに浮き沈みがない。ケガで長く休んで乗り鞍が減り、いい馬が回ってこない時期も、愚痴ひとつ言わなかった。“力を出せる状態にしておけば、そのうち結果も出るし、馬も回ってくる”って。今やるべきことを平常心でやる人」と話す。
長く活躍できる、その原動力は何なのか。「意識が高い。そして、天性ですね。新たなトレーニングを与えても、何回か練習するとすぐに身につける。難しい課題でも、です」。そして、馬を自在に操る力は、どこに隠されているのか。「筋肉の収縮率が優れているから強い力を一瞬で出せる。あとは騎乗時の体の“直線”ですよね。頭、耳たぶ、肩、股関節、膝、くるぶし-このラインが一本でそろうのが理想。普通は肩が前に出て背中が丸くなる。崩れないようにケアしているけど、これだけ直線になる人も珍しい」と驚く。
長谷川さんは、ドバイでムーアやスミヨンら、世界で活躍する騎手の体を見たことがある。「ライアン(ムーア)の柔らかさは豊さんに共通している。柔らかくて強い筋肉。彼は“普段どんなトレーニングをしているんだ?”って興味津々でしたよ」。世界のトップジョッキーから注目を浴びる理想の体つきと筋肉の質。4000勝の金字塔は天性や性格、そしてトレーニングによる努力から生まれた。
提供:デイリースポーツ