混戦が予想される今年の
菊花賞。2009年の
菊花賞は、多士済々なメンバーによる混戦模様から、単勝オッズ19.2倍の8番人気馬が勝利した。「平成乱菊列伝」、今回は
スリーロールスをお届けする。
■夏に成長を遂げた
スリーロールスが最後の一冠を制す
スリーロールスは、2008年
菊花賞当日の京都5レースでデビューした。4着だったが、1~3着は
アンライバルド、
リーチザクラウン、
ブエナビスタ。今も語り継がれる「伝説の新馬戦」である。
翌春、
アンライバルドは
皐月賞、
ブエナビスタは
桜花賞と
オークスを制し、
リーチザクラウンもダービー2着とクラシックを沸かせた。対して、
スリーロールスは3歳5月に500万下を卒業したに過ぎなかった。その後休養を挟み、9月に1000万下特別を4馬身差で快勝する。武宏平調教師は「8月に帰厩するとトモがピシッとしており、これなら
菊花賞もいけると思った」と成長を感じ取る。ただ、
神戸新聞杯では
リーチザクラウンが2着、
アンライバルドが4着し、ラ
イバルも順調な仕上がりを見せていた。
菊花賞はダービー馬
ロジユニヴァースは不在ながら、
アンライバルドや
リーチザクラウンのほか、
神戸新聞杯勝ちの
イコピコ、
セントライト記念勝ちの
ナカヤマフェスタ、2歳王者
セイウンワンダーといった多彩な顔ぶれが揃い、単勝人気は上位4頭が10倍を切るという混戦に。
スリーロールスは19.2倍の8番人気だった。
レースは
リーチザクラウンが大逃げを図り、最内から好スタートを切った
スリーロールスは4番手の内を追走。1000m通過は59.9秒、
リーチザクラウンと後続との差は広がる一方で2番手以降も縦長の展開となる。2度目の3コーナーでようやく馬群が詰まってくると、勝負は直線へ。残り200m、失速した
リーチザクラウンとそれを追った
ヤマニンウイスカーとの間を
スリーロールスが抜け出す。直後、ターフビジョンに物見をして外へヨレるも、
浜中俊騎手はムチを右から左へ持ち換え修正。最後は猛追した
フォゲッタブルと並んでのゴールに見えたが、勝利を確信する浜中騎手は何度も
ガッツポーズし、喜びを爆発させた。
「最後までタメていけばいい瞬発力で伸びてくれるので、コースロスなく乗って折り合いに専念した」と浜中騎手が振り返る通り、道中は好位の内でじっくりと構え直線の末脚を活かすことで、ハナ差の勝利を掴んだのである。
同一新馬戦から3頭のクラシックホース誕生は史上初。「伝説の新馬戦」から1年、最後に笑ったのは
スリーロールスだった。