昨年の3冠牝馬
アーモンドアイ以上を求めるのはさすがに酷にしても…。2歳女王
ダノンファンタジーや牡馬相手の
朝日杯FSに挑戦して3着の
グランアレグリアなど、今年の3歳牝馬路線も、例年以上の好素材が揃った印象がある。
一方で多様化してきたのが、その歩み。
桜花賞といえば、
チューリップ賞が“王道
トライアル”とされてきたが、
アーモンドアイが年明けの
シンザン記念からの
ステップで
桜花賞を制したように、その流れも少なからず変わろうとしている。
GIIIクイーンC(9日=東京芝1600メートル)には阪神JFで2、3着に好走した
クロノジェネシス、
ビーチサンバがエントリー。例年なら賞金400万円の1勝馬が積極的に参戦し、フルゲートが当たり前だったレースだが…。この強力関西馬2頭の出走表明で他陣営が意欲をそがれたのか、今年の登録は地方馬
アークヴィグラスを加えて11頭と異例の少頭数になった。
とはいえ、本格志向の東京マイル戦、しかもレベルも高いとなれば、力試しにはもってこいの舞台設定であることは間違いない。例年より少ないからこそ、果敢に挑戦を決めた賞金400万円の1勝馬には注意を払うべきだろう。
当コラムが注目したのは
カレンブーケドール。「
アーモンドアイは別格。あんな馬は(他に)いない」と国枝調教師が切り出したように、さすがに
年度代表馬との比較は愚問だったが…。
「牝馬にしては馬格がしっかりしているなかで、動きに素軽さがある。それにメンタルが強いんだよな。やっぱり馬は走る気持ちがないとダメ。前走は早めに(
アクセルを)踏んでも、脚色が鈍らなかったように、体も気持ちも成長してきた」と相応に高い評価を与えている。
確固たる裏付けも。新馬戦(2着)でアタマ差の勝ち馬は、次走の
ひいらぎ賞も連勝し、
共同通信杯でも注目を集める
ダノンキングリー。そのほか3着ペレは次走で勝ち上がり、4着
ジャスティンは
なずな賞を勝っているのだ。3着に敗れた前々走にしても、直線で2度、3度と前が詰まるロスの多い競馬だった。
「関西馬が強いな。それにルメールはフジさん(藤沢和調教師)のところの馬(
ミリオンドリームズ)に乗るのか」と相手関係に一目置きながらも、「(賞金400万円の1勝馬だけに)まずは出られることが大きい。なんとか賞金加算したいね」と意気込む。
ご存じの方もいるだろうか?
カレンブーケドールはデビュー当初に乳が出ることで一部で話題になった個性派だ。国枝調教師も「初めて見た」というレアケースのようだが、「乳房炎のたぐいで…。ただ競走能力に影響が出たり、調教を加減するようなことはない。今はほとんど治まっているし。まあ、おっぱいの大きさと能力の相関関係は、人間でも分からんからな」。
アパパネや
アーモンドアイといった名牝を手がけた国枝調教師にして、ある意味「未知な牝馬」なのも大きな魅力といえようか。
ちなみに国枝調教師も意識する藤沢和厩舎の
ミリオンドリームズは、昨夏札幌での新馬勝ち後、10月の
アルテミスSへの出走を視野に入れていたが、体調が整わず、その後も長期間在厩のまま調整された異色のキャラ。藤沢和調教師が“長く手元に置いていた”意味は容易に察せられる。このクイーンCは賞金400万円の関東馬が何かやってくれそうなムード満々だ。
(立川敬太)
東京スポーツ