牡馬クラシックの主役
サートゥルナーリアがトレセンに戻ってくる――。今月初旬からソワソワしていた周囲の記者たちが、何を理由にソワソワしていたのかはわからないが、そんな彼らを見る記者自身もソワソワしていた。
「これまでよりも、さらに
パワーアップして戻ってくるのではないか?」
そんなことは実は考えていない。
パワーアップしているに越したことはないが、
パワーアップしていなくても、まるで問題がない。2歳時のままでも断然の主役。絶対能力が抜けていると思っている。
では、なぜにソワソワしていたのか? それは
サートゥルナーリアの担当者が必然的に交代するため。以前の担当は
吉岡辰弥助手。しかし、彼は昨秋の調教師試験を見事に突破し、すでに技術調教師として新しいスタートを切っている。それは
サートゥルナーリアを担当する“次の人間”が必要になってくることを意味していた。
「角居キュウ舎のスタッフは、たいていが一流馬に携わっているんだから、誰になっても、大差ないんじゃないの?」
そんな声もあるだろう。その通り。確かにごもっとも。しかし、単純にGI馬といっても、人気を背負って勝った馬なのか、それとも気楽な立場で向かった馬なのかで大きく違うと思う。
「人間のイレ込みが馬にも伝わった」なんて話をよく聞く。大舞台でも平常心でいられる人物かどうかはとても大事なこと。なにせ、
皐月賞はもちろん、その後の
日本ダービーでも1番人気になるであろう馬なのだから。
帰キュウ直前のある日。辻野助手に「で、結局のところ誰になったの?」と聞くと、「アニキです。大方の予想通り。サプ
ライズはありませんでした」との返答。確かに予想通り。やっぱりアニキでしょう。アニキしかいないと思ってましたよ! 我らがアニキ・滝川清史助手しか、その大役を担えるご仁はいませんから!
なんて、燃えに燃え上がったところで記者の熱量は読者の方々に届いていないと思う。しかし、
ヴィクトワールピサ、
デルタブルース、
ハットトリック、
ラキシスと4頭のGI馬を担当したアニキは角居キュウ舎きっての有名人。なにより強調したいのは、
ヴィクトワールピサでダービーの1番人気(3着)を経験していることだ。
「めちゃくちゃ走る馬なんだろうとは思うけど、俺もジョッキー(ルメール)も、
皐月賞が初めてのレースやし、新馬戦みたいな気持ちで挑むよ。もしかしたら、飛びごろかもしれんで(笑)」なんて余裕をかませるのは、大舞台の場数を踏んできたからなのだろう。
なんだかんだで
皐月賞も勝つとは思うが、記者が期待しているのは1番人気で負けた2010年5月30日の雪辱だ。
「スローペースで展開が向かなかった。ヤス(岩田康)もプレッシャーでガチガチだったから、位置取りが悪くなっちゃったんだよな。でも、簡単に勝てるなんて思っちゃいけないとわかったよ」と9年前を振り返るアニキ。
そんなアニキと
サートゥルナーリアのダービー制覇を見るために、5月26日は仕事があろうとなかろうと、東京競馬場に行くつもりだ。新元号最初のダービー馬の担当が滝川のアニキなら、
ヴィクトワールピサをPOGで指名した一人として、こんなにうれしいことはない…って、ちょっと気が早過ぎるだろうか?
(松浪大樹)
東京スポーツ