最後の直線、先行した
津村明秀の
カレンブーケドールが抜け出し、流れ込みをはかる。
「折り合いがついて、イメージどおり自分の競馬ができました」と津村。
直線なかほどまで
カレンブーケドールがこのまま押し切るかに見えたが、外から
ミルコ・デムーロの
ラヴズオンリーユーが猛然と伸びてくる。
「4コーナーで前の馬がフラフラしていたので、思ったより後ろになった。届かないかなと思って心配したけど、馬がひとりで伸びた。今日初めて本気で走った。上がりはずっと伸びていた。素晴らしい」とデムーロ。
ラヴズオンリーユーは、ラスト100mあたりで、内の
カレンブーケドールに並びかけ、体半分ほど前に出た。
カレンブーケドールも食い下がる。
「今回、手応えは感じていました。並ばれて、普通ならあのまま離されるんだけど、頑張ってくれた」と
カレンブーケドールを管理する
国枝栄調教師。
「直線が長かったです」と津村。
最後は2頭のマッチレースとなり、
ラヴズオンリーユーが首差で
カレンブーケドールを抑え、80代目の
オークス馬となった。
「第70回のダービーを(
ネオユニヴァースで)勝ったので、第80回の
オークスを勝てて嬉しい」と、クラシック完全制覇を果たしたデムーロは笑顔を見せた。
兄の
リアルスティールはクラシックを勝てなかったが、同じ厩舎の妹が夢を叶えた。
「道中の位置取りはあれぐらいだと思っていました。勝負どころから加速するのに時間がかかりましたが、これまでもそれは同じで、だからこそ距離がもつのだと思います」と管理する
矢作芳人調教師。
2月に細菌が入って脚が腫れたときは、春を完全に休ませようかと悩んだこともあったという。
初のGI参戦、初の長距離輸送を経ての関東といったハードルを乗り越え、2006年
カワカミプリンセス以来13年ぶり、史上5頭目の無敗の
オークス馬となった。
「牝馬でこれだけ堂々としているのは珍しい。やはり、海外に行ってみたいですね」と矢作師。夢がさらに膨らむ、歴史的勝利であった。
(文:島田明宏)