理想とする位置取りや枠順などについて調教師に聞くと、「そんなことはジョッキーに聞け」と一蹴されることがある。乗りやすいように馬を調教し、レースでしっかり走れるように仕上げるのが調教師の役目であり、馬場に出てしまえば、そこから先は騎手の範ちゅうということだ。
だからこそ、レース後の検量室では、調教師がリプレー映像をチェックしながら、ジョッキーに細かくレース中のことを聞き、先々に生かそうとする。ここでの騎手の言葉には、それだけの「重み」がある。
GIII
小倉記念(8月4日=小倉芝2000メートル)に出走する
アイスストームが2走前の1000万下・
調布特別を勝った時、騎乗した
武豊から吉村調教師に対して、こんなアド
バイスがあったという。
「重賞でもいい競馬ができる馬。
小倉記念に行きましょう」
デビュー前から能力を買っていた馬とはいえ、ようやく準オープンに上がったばかりの状況で出てきた“重賞”という言葉に、トレーナーもいささか面食らったそうだが…。続く
垂水Sでも力が一枚上と思わせる勝ちっぷりで楽々とオープン入り。揚がってきた
武豊は「ね。言ったでしょ」と、しびれるセリフを披露してくれたとか。
「やっぱりレジェンドジョッキーが高く評価してくれるのは心強いですよね。実は豊さんだけではなく、以前に違う騎手からも、将来性を評価する言葉をもらったことがあったんです。去年の春、未勝利を勝ち上がった時に、和田君が“夏をうまく越せたら、
菊花賞でも楽しめる”って」(吉村調教師)
騎手からの重みのある言葉を複数もらっている
アイスストームの将来は、もはや安泰?
「トモがだいぶしっかりしてきて、本来持っている力を出せるようになってきましたからね。初めての重賞でどこまでやれるか、力試しです」
吉村調教師はあくまでチャレンジ精神で臨むが、そのレースぶり次第では今夏最大の上がり馬になるかもしれない。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ