地方勢にもダート
グレードで上位実績のある馬が複数頭いたが、単勝一桁台の人気を集めた中央3頭の決着となった。
スタートが課題の
コパノキッキングが抜群のスタートを見せた。
ヒロシゲゴールドが押してハナをとったのは予想されたとおりだが、
コパノキッキングは控えることはせず、半馬身ほどの差で
ヒロシゲゴールドをピタリと追走した。
あとで詳しく触れるが、前半600m通過34秒2は、このレースとしては平均的なペース。とはいえ単騎の逃げではなく、直後から突かれた
ヒロシゲゴールドには息の入らない厳しい展開だった。一方、ぴたりとついていった
コパノキッキングにとっても、近走は直線の末脚勝負で結果を残していたのが、この流れを先行してはさすがにゴール前までお釣りは残っていなかった。
結果、ラ
イバル2頭がやり合うのを見てレースを進めら得た
ヤマニンアンプリメには絶好の展開となった。スタート後は抑えて中団の外めを追走。3、4コーナー中間から進出すると直線でも抜群の手応え。満を持してという形で前の2頭を抜き去るという、まさに漁夫の利的な勝利だった。
好スタートを切った
コパノキッキングが
根岸Sのように控えていればどうだっただろう。
ヒロシゲゴールドを単騎で行かせることになり、そうなると流れは少し楽になったはずで、逃げ切りを許していた可能性が高い。藤田菜七子騎手にしてみれば、1番人気のプレッシャーよりも、重賞初制覇を期待してくれているファンや関係者やファンのためにもここで勝たなければというプレッシャーのほうが大きかったと思われる。それでみずからが
ヒロシゲゴールドを負かしに行くことになった。
もうひとつ
コパノキッキングは、直線半ばで
ヤマニンアンプリメに外から被されるように並びかけられたときに、内の
ヒロシゲゴールドとの間が狭くなり、怯んだように後退してしまった。このあたりは気性的に難しい面が出たのかもしれない。
勝った
ヤマニンアンプリメは、前走重賞初制覇だった
北海道スプリントCから連勝。同じJpnIIIだが、今回は確実にレベルアップしたメンバーを相手に完勝。2着の
ヒロシゲゴールドに1馬身差だが最後は余裕があり、あらためて5歳になっての充実ぶりを見せた。1400mの
黒船賞、
かきつばた記念では2着惜敗だったが、ワンターンの1200mで能力を発揮した。
地元に戻って復活が期待された
ラブバレットは9着。4コーナー手前から直線を向くあたりまでは
コパノキッキングの外にぴたりとつけていたが、外から勝ち馬に来られたところで失速。前哨戦の
岩鷲賞が、2016年、17年の同レースとまったく同じ1分10秒0というタイムで勝っただけに期待されたが、今回は
岩鷲賞よりコンマ2秒遅いタイムでのゴール。レコード決着にタイム差なしの2着に好走した一昨年のような上積みはなかった。
ヤマニンアンプリメの勝ちタイム1分9秒1は、2016年の
ダノンレジェンド、昨年の
オウケンビリーヴと同タイム。2018年は前述の通り
ブルドッグボスと
ラブバレットがタイム差なしの接戦で1分8秒8のレコード。馬場はいずれも良か稍重で、
クラスターCはここ4年、ほとんど同じようなタイムでの決着となっている。
盛岡競馬場のダートは、かつて馬場状態や砂の厚さで時計ががかなり変動したが、近年はひじょうに安定している。そして600mずつに分けた前・後半のタイム差がほとんど1秒以内というのも
クラスターCの特徴といえる。今回も前半34秒2で、後半が34秒9。
ダートの短距離戦では先行争いが激しくなることもあって、前半のタイムが後半より速いのが一般的だ。例えば大井1200mで争われる
東京盃や
東京スプリントは、前半600mが後半より2秒前後速いことがほとんど。先行争いが激しくなれば前半が3秒ほども速くなることがある。
これはコース形態の違いによるものと思われる。大井1200mでは、逃げ馬が内枠に入れば包まれないよう何が何でも行ききろうとするし、外枠に入れば、やはり位置を取りに行くため仕掛けていかざるをえない。最後の直線が長いぶん、3コーナーまでの距離がそれほどないためだ。
一方の盛岡1200mは、スタートしてから3コーナーまでの距離がわりと長いうえに、コーナーもゆったりしている。馬番別のデータでも枠順による有利不利がほとんどないことから、逃げ馬がどの枠に入っても無理に位置を取りに行くようなこともない。まれに前半が速くなるのは、ハナにこだわる逃げ馬が複数頭揃ったような場合だけだ。
大井の
東京盃や
東京スプリントでは、ときに人気薄が馬券に絡むのに対して、
クラスターCは人気上位馬での決着が多いのは、こうしたコース形態によるところも要因にあると思われる。