ジャパンCの外国馬不参戦が明らかになった。「世界に通用する強い馬づくり」を合言葉に創設された舞台も、日本馬のレベルアップにより役目を終えたということか。
実際に外国馬Vは05年
アルカセットまでさかのぼること14年。11年
デインドリーム(6着)、12年
ソレミア(13着)と
凱旋門賞馬が連続で敗戦して以降、外国馬は質、量ともに“山のにぎわい”の様相を呈した。0頭になったとて大勢に影響はあるまい。
それでも引っかかったのは、今年の
メルボルンC2着馬
プリンスオブアラン(セン6=英国)の回避理由。「常用する馬装具が着用不可のため断念した」とあれば、ファンにとって“もったいない”話だと思う。認可されなかったのはバリア
ブランケット。
ゲートとの接触を嫌う馬のための毛布で、スタート直後に外れる仕組みだが、日本は「ノー」という。基本的に馬は狭い場所が好きではなく、世界では様々なゲート対策が講じられる。対してゲート導入以降、一貫して厳格さを保つのが
JRAのルールである。
「以前はブラインドフォールド(目隠し用の覆面)を着用できず惨敗した外国馬もいたよね。ゲート
ボーイを導入すれば、より安全性は増すと思うけど、公営で認められる『尾持ち』でさえ中央は認めないから…。日本馬にとってゲートは永遠のテーマになるだろう」
こう語るのは「覚悟の競馬」の著書も出版する“美浦のご意見番”こと
国枝栄調教師。対して
JRAはゲート内も競走の一部と捉えており、「尾持ち」は競走に第三者を介在させる行為との認識。公正競馬の中で望ましくないというスタンスを貫く。立つ視点がサラブレッド側か否かの違いだろうか。
ただ、かつて最大限“もったいない”と思わせた馬が存在したのも事実。12年の香港G1クイーンエリザベスII世カップを圧勝して世界的注目を集めた
ルーラーシップだ。
発馬さえクリアすればスーパーホースになれた逸材も、ゲート
ボーイが認められない日本では毎度の大出遅れ。常に最速上がりをマークしながら国内では無冠に終わった。何にせよ、
キセキ、
メールドグラースを出す種牡馬成績から、ゲートと競走能力が別物であることは明白。当方が現行システムを肯定できないのは「競馬の魅力を引き出す」という点において無力さを感じるからだ。
外国馬の
ジャパンC不参戦がゲートのみの理由ではないことは百も承知。ただ、国際競走の華やかさにおいて香港との決定的な差を生むものは…。検疫も含めたサラブレッドに対する優しい環境づくりではないかと思うのだ。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ