令和2年度の調教師免許試験合格者が12月5日午前10時に発表され、美浦所属の合格者3名の記者会見が同日午後1時から美浦トレーニングセンターで行われた。3名の会見の様子は以下の通り。
■伊坂 重信(いさか しげのぶ)
昭和52年1月1日生まれ 42歳 出身地:北海道
美浦・
大和田成厩舎所属 調教助手
――受験回数は?
トータルで9回目、2次試験は7回目で合格致しました。
――志望動機は?
高校から馬に乗り始めて学生時代は馬術部だったのですが、その中で競馬が大好きな先輩に競馬を教えてもらって興味を持つようになりました。そのまま競馬の道で生きていきたいなと思うようになりまして、調教師になりたいという思いを持って
JRAに入りました。その時は漠然とした動機でしたが、トレセンに入って大きなレースを取らせてもらったり、いろいろな出会いがありまして、その人たちに恩返しがしたいという思いで、より具体的に調教師になりたい、なって皆さんに恩返しがしたいという気持ちになりまして、2011年から受験をし始めました。
――目標の先輩調教師、理想とする調教師像、厩舎像は?
私よりも先に調教師になられている方々は本当に立派ですので、具体的にどなたが目標というよりも、どの調教師も皆さん私のお手本だと思っておりますし、いずれ私がのちのち調教師になる方々のお手本になりたいと思っております。
厩舎の中ではチームワーク、和を大事にしたいです。(厩舎は)12人ほどしかいない所帯ですので、皆でチームワークをしっかりとって良い競馬を提供できるような厩舎にしていきたいです。
――これまでで思い入れのある担当馬は?
久保田貴士厩舎の時に担当していた
マリアライトという馬です。大きなレースを2つ(2015年
エリザベス女王杯、2016年
宝塚記念)も勝たせて頂きましたし、1番印象に残っています。ただ携わってきた1頭1頭が本当に今の私の礎となっていますので、そういう意味ではどの馬も本当に印象深いと思っています。
――今後の抱負や、具体的に勝ちたいレースは?
馬1頭1頭にいろいろな方々の思いが詰まっていますので、そういった馬を預かる責任者として、責任を持ってしっかり管理していきたいというのと、その馬に関わるすべての方々に楽しく幸せになって頂きたいという思いがあります。もちろん大きいレースに勝てればそれに越したことはないのですが、どんなレースであっても、1つ1つ全力で向かっていって、競馬の発展に少しでも寄与していきたいです。具体的にどのレースを勝ちたいというのは特にはなくて、1つ1つ、全力を尽くしていきたいと思います。
■鈴木 慎太郎(すずき しんたろう)
昭和53年12月19日生まれ 40歳 出身地:愛知県
美浦・
堀井雅広厩舎所属 調教助手
――受験回数は?
1次試験は5回で、2次試験は4回目で合格させて頂きました。
――志望動機は?
競馬サークルに家族、血縁者はいませんし、乗馬の経験もなかったのですが、北海道に旅行に行った時に初めて目の前で馬を見まして、馬の美しさや魅力に圧倒されたというか、惚れこんでしまって、旅行から帰ってきてすぐにこの世界に飛び込みました。トレセンに入ってきた最初の頃は、調教師を目指していなかったのですが、経験を積んでいくうちに自分のホースマンとしての力をもっと試したいという欲も出てきましたし、自分の感じた馬の魅力や競馬の魅力を幅広くいろいろな人知ってもらいたい、伝えていきたいなというのが自分の思いとしてありまして、調教師を目指しました。
――目標の先輩調教師、理想とする調教師像、厩舎像は?
今までに3人の調教師のもとに所属させて頂いているのですが、
小西一男先生、
加藤征弘先生、
堀井雅広先生とそれぞれに素晴らしい特色があって、そういったところをうまく自分で融合して、自分の理想とする調教師になっていきたいと思います。
厩舎像としては、日本に2つしかないトレセンで、その中にある厩舎の従業員ということですので、馬を扱うプロフェッショナルとして、胸を張ってプロの集団であると言えるような厩舎を作っていきたいです。これから先、そういったところを見てこの世界を目指す若者が増えてほしいというのもありますので、見本になるような集団にしていきたいと思っています。
――これまでで思い入れのある担当馬は?
日本ダービー(2013年)で3着になった
アポロソニックという馬が1番記憶には残っているのですが、思い入れという面ではどちらかというと未勝利で終わった馬、自分がうまくできなかった、自分のミスで能力を発揮させてあげられなかった数多くの馬たちが心に残っています。そういった失敗を踏まえて、今後に生かしていきたいと思います。
――今後の抱負や、具体的に勝ちたいレースは?
まず勝ちたいレースは、やはりホースマンの憧れと言われるダービーです。自分が担当していた馬(
アポロソニック)が3着で悔しい思いをしたというのもあるのですけど、ダービーという晴れやかで特別なレースですし、1番勝ちたいレースはどれかと問われたら、真っ先にダービーが上がります。
今後の抱負は、昨今アニマル
ウェルフェアや(競走馬が引退した後の)セカンドキャリアなどが話題になっていますが、そういったことも含めて今風に言うとホース
ファースト、馬を再優先にした考えを基にした経営をしながら、馬の魅力を伝えていって、競馬や馬に関して携わっていくすべての人が笑顔になれるような厩舎の経営をしていきたいと考えています。
■辻 哲英(つじ てつひで)
昭和55年3月6日生まれ 39歳 出身地:千葉県
美浦・
戸田博文所属 調教助手
――受験回数は?
今回で2回目で、2次試験は今回が初めての受験でした。
――志望動機は?
小学生の頃に父親に中山競馬場に連れていってもらって、馬のきれいさやジョッキーの勝負服の輝きなどが脳裏にあって、それから競馬を見るようになりました。長く見続けるうちに好きな馬、好きなジョッキーが出てきたこともあり、その後、厩舎関係者になりたいという目標ができました。実際に厩舎に入ってからは調教師になりたいとは考えていなかったのですが、今の師匠である
戸田博文調教師の勧めもありましたし、私自身が競馬ファンでありますので、今の競馬ファンの方々にも何か還元できたらと思って調教師を目指すことに決めました。
――目標の先輩調教師、理想の調教師像は?
トレセンに入ってから4名の調教師のお世話になりました。1番最初の
加藤和宏先生には仕事のしやすさということを教わりましたし、引退された池上昌弘先生には仕事の基本の大切さを教わりました。
大和田成厩舎では皆で協力して作業をする、寛大な気持ちを持って馬に接するということを教わり、今の師匠である
戸田博文先生には、馬が大好きな気持ち、馬を大事にする気持ちと、信念を持って調教するということを学びました。それぞれお世話になった調教師の方々の良いところを見習いながら、自分なりの色をつけた厩舎にしていければと思っております。先日のラグビーのワールドカップでも
ワンチームという言葉が有名になりましたけれども、厩舎においてもチームワークが必ず大切になってくると思いますので、そういった横の繋がり、皆で同じ方向を向いて仕事をしていけるといったことを大事にしながら、必ず結果を出せる厩舎にしていきたいです。
――これまでで思い入れのある担当馬は?
非常に難しい質問なのですけど、1番印象に残るのはトレセンに入って初めて担当させて頂いた
ヴァルナという馬です。最近関西に同じ名前の馬が走っているようですけど、トレセンに入った当初は担当がその馬1頭しかいなかったこともあり、1番印象に乗っています。
――今後の抱負や、具体的に勝ちたいレースは?
1番勝ちたいレースが何かと言われたら
日本ダービーになるかとは思うのですが、それまでには目の前のレースがありますし、まずはその目の前のレースに無事出走させてそこで結果を出せるような厩舎にしていきたいと思っています。
競馬の世界には血縁がいない状態でここまで来ましたので、かなりいろいろな方のお世話になってここまで辿り着けました。そういった方々に少しでも恩返しができるように、またそれをファンにも伝えられるような厩舎にしていきたいと思っています。
(取材・文:佐々木祥恵)