「
有馬記念・G1」(22日、中山)
最高の形で締めくくった。G1馬11頭がそろった豪華な一戦は、2番人気の
リスグラシューが5馬身差をつける圧勝劇で幕を閉じた。
宝塚記念に続く同一年の
グランプリ制覇は、史上10頭目で牝馬では初、鞍上の
ダミアン・レーン騎手(25)=豪州=は史上8人目の同レース初騎乗初制覇となった。2着には3番人気の
サートゥルナーリア、3着には4番人気の
ワールドプレミアと今年の
皐月賞、
菊花賞馬が入った。断然の1番人気に推された
アーモンドアイは9着に終わった。
これが世界を制した末脚だ。圧倒的な強さ。そして完璧な鞍上のリード。
リスグラシューが見事に有終Vを飾った。
中団のインで息を潜めたレーンは冷静に“その時”を待った。斜め前にいる圧倒的1番人気の
アーモンドアイが動いても、相棒を信じるその手は微動だにしない。4コーナーが目覚めの時だ。コースを内から鋭角に切り替えて大外へ持ち出す。「馬の能力に任せた。反応が良く、その瞬間、自信を持った。後ろから差してくる馬はいない、と」。前方集団を並ぶ間もなくかわし、ラ
イバルらを子供扱い。最高の仕上げに、最高の騎乗で応えた。
宝塚記念、豪州の
コックスプレートに続くコンビ3勝目を手にし、「成長していた。3戦の中で一番強かった」と驚く。それだけに、ゴールの瞬間はさみしさも感じたという。「G1を勝つと、次を楽しみに思うのが習慣となっているけど、“最後の騎乗だね”と残念な気持ちにもなった。今まで乗った馬で一番強く、世界一になる可能性があると思ったので。うれしさと二つの感情が
ミックスした」。ラストランに複雑な思いを口にした。
リスグラシューにとってレーンは欠かせない存在。だからこそ、矢作師がJRAに働きかけ、国内外G1・2勝の実績が認められ、一日限定の臨時免許が交付された。「まさか乗れるとは思っていなかった。ありがたい」と感謝する。
競馬一家に生を受け、腕を磨き続けた。「初めてポニーに乗ったのが5歳の時。15歳から父の弟子として見習い騎手を務めた」。父が現調教師なら、母も元調教師という豪州のサラブレッドは、味わったことのないファンの雰囲気を日本で体感した。「ファン投票で出走馬が決まるレース。ファンのために結果を残せてうれしい」。そう話すと「“あとで戻る”と言ったので」と大雨の中、
サインを求めるファンの元へ走った。
中山は初経験のコースだったが、過去の
有馬記念での映像をチェックし、決戦に備えた。「
ディープインパクトと
キタサンブラックが印象的だった。
リスグラシューはいつでも勝てる馬。その2頭が相手でも勝っていたよ」。25歳の若武者が身震いするほどの強さ。惜しまれて引退する
リスグラシューの圧倒的パフォーマンスは、海外でも語り継がれることだろう。
提供:デイリースポーツ