名古屋市港区の名古屋競馬場で、白のハートが輝いている。4月にデビューし、ハート柄の勝負服をまとった木之前葵騎手(19)は、愛と正義のために戦うアニメのヒロイン「キューティーハニー」さながらに実力を兼ね備え、早くも6勝。苦境が続く競馬場の救世主との期待もかかる。
■最終目標は「626勝上回ること」
ファンファーレが鳴った。5日の名古屋競馬場、9頭立ての第1レース。3歳牡馬(ぼば)ボールドタイドに騎乗した木之前騎手は、スタート直後に2番手につけ、最後の直線で鮮やかに差し切り、6勝目を挙げた。2着までに入る「連対率」は、1番人気のレースでは100%だ。
4月1日現在、17の競馬場で開かれている地方競馬の騎手305人のうち、女性は7人。中央競馬の1人を含めても8人だけだ。
名古屋競馬では、一昨年に引退した宮下瞳さんが記録した通算626勝が歴代女性騎手の最多勝。273勝で歴代4位の山本茜騎手と木之前騎手の2人が、現在の名古屋競馬での女性騎手だ。
「馬にやさしい騎乗」をめざすが、筋力の弱さを痛感する。「追い合いになると、先輩の男性騎手にはまだまだ追いつきません」
毎日、まだ夜が明けぬ午前2時半ごろから9時ごろまで、どの騎手よりも多い20~25頭ほどの調教をする。「男社会なので優しくしてもらえる」と笑うが、所属厩舎(きゅうしゃ)以外の調教師にも「乗せてほしい」と、どんどん話しかけている。
所属厩舎の錦見勇夫調教師(65)は「課題は、スタートとコース取り。勝負の世界は一瞬の判断だが、まだまだ出来ていない」と厳しい。それでも、有力馬に騎乗させるなど期待は高い。「明るさがあって、物おじしない。一つでも多く勝ち、周りから信用される騎手になってほしい」と話す。
同じ厩舎で、今年54勝を挙げている大畑雅章騎手(29)も感心する。「強みは鞍上(あんじょう)であわてないこと。馬が疲れないように乗っている」
レース前、きゃりーぱみゅぱみゅの音楽を聴き、気持ちを高める。「最終目標は、宮下さんの626勝を上回る記録を作ること」と、夢は大きい。
名古屋競馬は大幅な赤字を抱え、存続の危機に瀕している。7月下旬に存廃などの指針を含めた経営改革の報告書をとりまとめる。新しいファン獲得となる救世主となるのか?木之前葵騎手の今後の活躍から目が離せない。
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