最近にわかに脚光を浴びているのが、ダート戦を高い確率で勝ちまくっている
アメリカンファラオ産駒だ。デビューを果たした
JRAの3歳世代7頭のうち、実に6頭が勝ち上がり、計11勝をすべてダートで挙げている。その
ハイライトが先月8日の交流GI
ジャパンダートダービー。GIII
ユニコーンSで5馬身差の圧勝を飾った
カフェファラオと、交流GII兵庫CSで2着の
ダノンファラオが参戦。単勝1倍台の圧倒的支持を集めた
カフェファラオは7着に沈んだものの、
ダノンファラオが快勝して産駒初のGIウイナーに輝いた。
だが…。我々はその
ダノンファラオの快走をも吹き飛ばすような“怪走”を目撃することになる。25日の新潟芝外1600メートル新馬戦。
アメリカンファラオ産駒の
リフレイムは直線で極端に右にヨレ始め、最終的には外ラチ沿いを走ることになりながらも先頭は譲らない、インパクト満点の走りを披露したのだ。そのレース内容の是非はともかく、桁違いの能力を発揮し始めている
アメリカンファラオの子供たち。ならば
レパードS(日曜=9日、新潟ダート1800メートル)の取材先も、もはや決まったようなもの。
アメリカンファラオ産駒
エイシンアメンラーを送り出す野中調教師の元へと向かった。
「やっぱり、この産駒に器用さは求められないよなあ」とは
リフレイムの新馬戦を見ての師の第一声だ。「ウチの
エイシンアメンラーもワンペースで不器用な馬。今まで勝ったのは行き切れた時だけなんだ。力は相当あるんだけど、気難しくて馬混みを嫌がるので、条件が整わないと苦しいんだよね。まあ、ウチのも心身ともにまだまだビルドアップが必要な段階」となかなか手厳しい注文が並んだが、それは当然、期待の裏返しでもあるだろう。
エイシンアメンラーの調教パートナーを務める湯浅助手によると「基本的にはおとなしいんだけど、いわゆるオンオフがハッキリしている馬。一度機嫌を損ねると、なかなか直らないので、そのあたりに注意しながらの調教になりますね。カイバ食いがいい割に肉付きがもうひとつなのは、神経質なところが原因なのかな」。多少、手を焼いていることがうかがえるが、「心身ともに少しずつ成長しているのは確かだし、やる気スイッチが入った時の能力の高さは間違いない。先々も含め、どんな競馬をしてくれるか楽しみですよね」とその素質にはホレ込んでいる様子だ。
そういえば
ダノンファラオの岡助手も「普段の調教ではおとなしくて、操縦性も高い馬なんですけどね。競馬に行くと気難しさが出るのかな。先手を取れれば強いけど、自分の型にハマらないとモロさが出ますね」と言ってたっけ。その特徴はよく似通っており、能力は高いが、それを引き出すにはいろいろと注文が付くのが、この
アメリカンファラオ産駒の“カラー”なのだろう。
よくよく考えてみれば、野中厩舎のダートGI馬
インティや売り出し中の
ロードレガリスもこの手のタイプの馬たちだ。飛び切りの才能を持ちながら、ちょっとしたことで機嫌を損ね、なかなかその気になってくれない。そんなわがままな馬たちを一流に育て上げた野中厩舎には「その気にさせるノウハウ」が何かあるのでは? この馬はきっと出世する――。確固たる根拠はないけど、そう確信している。
(元広告営業マン野郎・鈴木邦宏)
東京スポーツ