「1作目が一番面白かった」。シリーズものの映画あるあるだ。ハナからシリーズ化を見越した作品ならともかく、単発勝負の映画は、いきなりから全力投球が当たり前。紆余曲折を乗り越え、最高の
クライマックスで幕を閉じるのだから、続編が作られたところでそれを超えるのは非常に難しいミッションとなる。
それは競馬も同じことだと思っていた。大目標のレースを見事に勝ち切った馬が、次走でさらに調子を上げてくるとは考えにくい。ゆえにGIII
北九州記念(日曜=23日、小倉芝1200メートル)に出走する
ジョーカナチャンは評価を下げるつもりでいた。
というのも2度の骨折を乗り越え、待望の重賞初制覇を果たした彼女の物語は、いわば前走までが「シーズン1」。管理する松下調教師が「大目標」と公言していた
アイビスSD直後のこの一戦は「シーズン2」のオープニングにあたる。連勝を期待するのはさすがに酷ではないかと考えていたからだ。
しかし、事実は小説より奇なり。「前走が100%のつもりだったので正直、今回はどうかなと思っていたんです。でもこの馬、まだまだ奥がありそうなんですよ」と松下調教師も驚く充実ぶりで、さらに調子を上げているというのだ。
松下厩舎はビシッと負荷をかける1週前の稽古が実質的な最終追い切り。その重要な調教に前回、今回とも騎乗した内田助手に感触を尋ねると、「前回の時計(栗東坂路4ハロン53.2-12.1秒)は目一杯にやったものだけど、今回は手応えに余裕を残して同じくらいの時計(同53.7-12.0秒)が出た。使い込んだことがない馬なので探りながらだったが、オンオフの切り替えがうまくいってるんじゃないかな。自信を持って送り出せる状態なのは間違いないよ」と力強いコメントを返してくれた。
(3・1・0・1)と得意にしている芝1000メートルに対し、芝1200メートルは(0・1・0・3)。気になる距離の1ハロン延長についても「ハナにはこだわらないし、馬混みも大丈夫。乗り方ひとつで対応できると思うよ。
レシステンシアもそうだったからね」。阪神JFで初マイルを見事にクリアした昨年の2歳女王を引き合いに出し、距離克服に期待を寄せている。
ケガで休んでいた期間が長い分、まだまだフレッシュな5歳牝馬。年齢以上の伸びシロと自慢の快速を生かして「シーズン2」どころか、「シーズン3」「シーズン4」…とヒットを飛ばし続けてもらいたい。
(栗東の馼王野郎・西谷哲生)
東京スポーツ