栗東トレセン通いの人間で中山義一助手(64=松永昌)を知らない人はまずいないだろう。北橋厩舎時代(2006年解散)には
福永祐一の兄貴分的な存在としてスポーツ紙で連載コラムを持っていたほか、
スキー、
サーフィン、ボウリング…多彩な趣味でマルチな才能を発揮した男だ。その中山助手が来年1月の定年を待たずして、先週20日に退職した。
北橋厩舎時代は
エイシンプレストンほか数々の名馬に携わり、松永昌厩舎へ移ってからも
ウインバリアシオンの調教パートナーを担当。当方も絶大なる信頼を寄せた「仕上げ人」には、厩舎の粋な計らいが用意されていた。退職前日の19日に“福永との併せ馬”が実現。これが42年の助手人生の集大成に。
福永が騎乗したのは
新潟2歳S(日曜=30日、新潟芝外1600メートル)に出走予定の
フラーズダルム。これを中山助手騎乗の
メイショウベンガル(3歳2勝クラス)が絶妙なペースで先導する。最後は
フラーズダルムが楽々と2馬身の先着。併せ馬の相手として悔いのない仕上げを施せたことで、中山助手からは自然と笑みがこぼれた。
「(福永)ユーイチは“体の使い方が上手になっている”と褒めてくれたよ。2歳のこの時期だからまだビッシリとはやれていないけどね。跳びが大きくて、すごくセンスがある。それに新馬のころはカイバ食いが悪かった馬が、この中間は480キロ近くまで増えて、すごく良くなっているんだ。ここでいい競馬ができれば来年が楽しみになるね」
中山助手は
フラーズダルムの将来性に確かな手応えを感じている。それもそうだろう。デビュー戦(阪神芝外1600メートル)では4角手前で楽々と先頭に並びかけ、そのまま後続を4馬身突き放す圧勝劇。来春のクラシックが見え隠れする逸材なのは間違いない。
思い起こせば、
ウインバリアシオンはデビュー戦~弥生賞、そしてラスト2戦でも福永が手綱を取ったものの、このコンビで
ビッグタイトルを手にすることはなかった。
「ユーイチと一緒にGIを取りたい」
松永昌厩舎に移ってからも常々、こう口にしてきた中山助手の“置き土産”こそが
フラーズダルムなのかも…。この
新潟2歳Sで夢が広がるような走りを見せてほしい。いや、見せてくれると当方は信じている。
(栗東の遠吠え野郎・難波田忠雄)
東京スポーツ