7週間に及ぶ札幌出張を何とか切り抜け、今週から本拠地・美浦での取材が再スタートした。思えば今夏は北海道も尋常ではない暑さ続き。ゆえに例年ほど気候のギャップを感じていないが、それでも仕事のギャップに戸惑うのは例年通り。“遠い親戚より近くの他人”ではないが、今週はまだ手探りの美浦馬ではなく、濃密な記憶として残るGIII
札幌2歳Sを掘り下げてみたい。
今年1分48秒2のレコード決着を制したのは牝馬
ソダシだった。白毛馬の芝重賞制覇は初めてであり「強かった。やばい。これ人気出ちゃうわ」と
須貝尚介調教師は相好を崩したが、最大の勝因は5ハロン通過59秒2→ラスト1ハロン13秒0のサバ
イバル戦になったことだろう。
「スパッと切れないが、持続力があって長く脚を使う」という同師の見解のみならず、
ウイングリュック(8着)=
和田竜二の「勝ち馬に外から来られた時に、すごい圧を感じた。迫力が半端ない」の弁は
父クロフネのDNAを強く感じさせるもの。次走に関して「ダート血統でもあり、いろいろプランがある。
アイドルホースになりつつあるし、決めつけずに大事にしてお披露目したい」との言葉が、二刀流としての夢を広げている。
一方、敗れた組にも大きな可能性は残っていそうだ。2着
ユーバーレーベンの
戸崎圭太は、クビ差の惜敗に極めて険しい表情をのぞかせた。
「気持ちが両極端でオフの時には流れに乗れず、レースの組み立てが難しくなった。これだけ大ざっぱな競馬で勝ち負けするから能力はあるが、今後は精神的にもっと成長してくれないと」
放牧明けで前走比20キロ増の馬体(478キロ)から、はた目には大健闘とも映るが、鞍上がまるで納得していないのは素材を高く買えばこそだろう。
検量室で悔しさを隠し切れなかったのは、1番人気で3着に敗れた
バスラットレオン=
坂井瑠星も同様だった。
「ゲートが速く、あの位置に。2戦目でも落ち着いていたし、新馬と違う持久力勝負でも最後まで頑張ってくれました。結果は悔しいけど、いい馬なのでこれから期待できると思います」
初陣で記録した33秒6の上がり時計が示す通り、同馬の最大の武器は非凡な瞬発力。ゆえにハイペースの2番手追走は、鞍上にも大誤算の展開だったに違いない。むろんクラシックはまだまだ先。夏に出会った若駒たちのさらなる成長、飛躍が待っているはずだ。
(札幌帰りの浦島野郎・山村隆司)
東京スポーツ