フェブラリーステークス以来、約8カ月ぶりの有観客GIとなった第25回
秋華賞で、歴史が動いた。
圧倒的1番人気の支持を得た
松山弘平の
デアリングタクトは、まずまずのスタートを切った。そのまま出たなりで進み、後方5、6番手で1、2コーナーを回って行く。
向正面で馬群は12、3馬身の縦長に。
デアリングタクトは、前半1000m手前で、じわっとポジションを上げた。
「少しゲートでうるさいところがあったのですが、上手に出てくれました。ポジションも思っていたとおりのところを取ることができて、流れに乗ることができました」と松山。
3、4コーナーで外からさらに差を詰め、先頭を1、2馬身の射程にとらえて直線に向いた。松山はこう話す。
「力がある馬なので、最後はいいところを走らせようと思っていました。自分の馬が一番強いと信じていました」
先頭は内の
マルターズディオサ。馬場の真ん中から脚を伸ばす
デアリングタクトは、ラスト300m地点で2番手となり、いつでも抜け出せる形になった。
ラスト200mで力強く先頭に立ち、後続の追い上げを封じ、1馬身1/4差で勝利をおさめた。この瞬間、史上初の無敗の牝馬三冠馬が誕生した。
鞍上の
松山弘平は、左手で3本の指を空にかざし、喜びを表現した。
「体が大きくなって、いい成長をしてくれました。自分の馬が一番強いと信じていました。無敗の三冠ということで、正直、プレッシャーはあったのですが、こういう馬に出会うことができて幸せです。馬にはありがとう、おめでとうと言いたいです」
上がり3ハロンはメンバー中2位タイの35秒8。キャリア5戦目にして初めてメンバー最速ではなくなったのは、勝ちに行く競馬をしようと早めに動いたからだ。
後方一気の
桜花賞、他馬に囲まれ前が壁になっても突き抜けた
オークス、そして今回と、三冠それぞれで異なる強さを見せた。
史上6頭目の牝馬三冠馬
デアリングタクトが、次はどんな強さを見せてくれるのか。楽しみがさらにふくらんだ。
(文:島田明宏)