追い切り映像と比較すれば明白だった。前走比わずかプラス2キロ。キリッと引き締まった体は、むっちり映った2日前の美浦とは別馬のよう。歩く姿に勝利を確信したファンも少なくなかったはずだ。何の話題かといえば、先週の
天皇賞・秋で史上初の芝GI・8勝を成し遂げた
アーモンドアイのパドックの話である。
「追い切り後の計量では498キロ。最近は輸送で減ることなんてなかったし、当然多少の余裕は仕方ないと覚悟した。それがコレだもん。(担当の)根岸(助手)も言っていたけど、土曜に競馬場に到着してわずか1日で馬が自分で体をつくってきた。仕事を分かっているんだね。やっぱりすごい馬だよ」
レース後の検量室前、満面の笑みで
グータッチを求めてきた鈴木勝美助手が“シェイプアップ”の舞台裏を明かしてくれた。金字塔の源は突出したフィジカルにとどまらない。
アーモンドアイはメンタルこそ超一流のアスリート。それを知らしめるひとコマだった。
さて、秋のGIシリーズが中休みになる今週、当方が楽しみにするのは日曜(8日)東京メインのGII
アルゼンチン共和国杯(東京芝2500メートル)。
戸田博文調教師の“秘蔵っ子”
ラストドラフトの復活Vが期待できるからだ。
当初予定した
函館記念を深管不安でパスし、仕切り直しで挑んだ前走・
ケフェウスS(中京芝2000メートル)は1秒3差8着。ふがいない敗戦に当時は肩を落としたものだが、後日、担当の織田洋平厩務員に声をかけると思わぬ敗因が明らかになった。
「実はレース後は大変だったんです。厩舎に戻る途中に馬がフラつきだして、崩れ落ちそうなほど歩様がままならない。
オークスの
アーモンドアイ? ええ、そんな感じ。暑さがまるで引かない9月半ばで、明らかに熱中症を起こしてました」
基本的に暑さに弱いタイプなのだろう。振り返れば勝利したGIII
京成杯も、2着したGIII
中日新聞杯も時季は冬。同馬にすれば、ようやく走れる季節が到来したのである。
「前走は久々もあってかかり気味でしたが、馬の後ろに入れば折り合いはつくタイプ。初距離にも心配はなく、涼しくなって体調も上向きですよ」
こう話すのは指揮官・戸田調教師。3着だった
アメリカJCC(中山芝外2200メートル)は他馬に外ラチ沿いまで振られながら、ナンバー2の上がり(36秒3)を記録したほど。当時の走りを思えば距離延長も東京替わりも、きっと大歓迎。さあ、今週もレース後の
グータッチに期待しよう。
(美浦のパー野郎・山村隆司)
東京スポーツ