競馬歴=記者歴とキャリアはまだまだの私ですが、GIコラムを書かせてもらうようになってからは実に様々なGI馬を取材させてもらっています。その中でヒシヒシと感じたのは、競走馬は生まれ持った「能力」はもちろん、「気性」も重要なウエイトを占めていることです。
いくら能力があっても、それをレースで出し切れないと意味がない。だからといって「限界以上に頑張り過ぎてしまう」のも競走生活を長く続ける上では考えものなわけで…。ホント、難しいですよね。
GIの常連になるような馬ともなれば、自分の生まれ持った性格とうまく付き合っている子が多い気がします。特に多いなと思う性格を挙げるなら「スポ根系」「従順系」「精神統一系」「インテリ系」かな?あくまで「個人の感想です」って表記が必須ですけど。とはいえ、今回ご紹介したい馬の性格がなかなかいないタイプなのは確かだと思います。
「ノヴァの性格?ひと言で表すなら“脱力系”かな」
笑いながらそう教えてくださったのは、
サンライズノヴァを担当する棚江助手。
だ、だ、脱力系ですと!? それ、大丈夫なんですか?
「脱力って結構、大事なんだよ。例えるなら南海
ホークス時代の門田。一瞬の切れでビームみたいなホームランが打てたのは、その前の脱力系スイングがあったからだと俺は思ってる」
ホークス…。我が愛するジャイアンツを赤子扱いして、コテンパンにのしてしまった、その名前を今は聞きたくありませんでした…なんていう個人的な感想は置いといて。その話、詳しく教えてください!
「プロ野球史上最年長の40歳でMVPに選出された門田博光だよ。ユーチューブでホームラン映像を見てみな。ボールがバットに当たるインパクトの瞬間まで、脱力しているみたいに見えるから」
すぐに映像を見てみると、本当にその通り。ふわ~っとスイングしているように見えるのに、そのバットから飛んでいくボールは弓なりではなく、真っすぐな軌道を描いて、観客席へ飛び込んでいくんです。
「インパクトの瞬間に全神経を集中させるから、あんな切れが発揮できるんだ。ノヴァもそのタイプなんだよ」
それを聞いて思い出しました!今年のフェブラリーS(3着)時、棚江助手がノヴァをたとえて「自分で満塁にしておいて、ゼロで抑えるみたいな競馬をするヤツ。だから最後の最後まで生きた心地がしない」と語っていたのを…。
つまり
サンライズノヴァは、門田選手でいうところの“インパクトの瞬間”が自分で分かっているんですね。周りはヒヤヒヤですけど。
そんな脱力系競走馬が見せる最近の安定ぶりは、ある部分の成長も大きいそう。
「昨年の
南部杯(1着)くらいからゲートを出るようになったことだね。どうせ末脚一手だといっても、序盤に自分で位置を取りに行けるのと、そうでないのとでは温存できる体力が違ってくるからね」
成長すべきところはしっかり成長してるってことです。チャンピオンズCでは同門の
クリソベリルが最大のラ
イバルとなりますが、「あっちは横綱、こっちは関脇と思われている隙を突いてやるって虎視眈々と狙ってるかもよ。あ、俺じゃなくて、(松若)風馬がね」。何だか馬と同じような脱力系コメントで締めてくれた棚江助手。うんうん、この緩い感じが逆にいいのかも。
棚江助手が言うように、南海
ホークス伝説のバッター・門田選手のホームランをほうふつさせる閃光のような切れっぷりが、中京の直線で見られることを期待しようじゃないですか!
(栗東の転トレ記者・赤城真理子)
東京スポーツ