12月3日の午前11時45分。1台の馬運車が多くの人に見送られながら美浦トレセンを出発した。乗っていたのは
ジャパンCを制し、史上初となる芝G1・V9を記録した
アーモンドアイだ。最前線を走り続けた現役最強牝馬が、ラストランを終え、国枝厩舎から福島県のノーザン
ファーム天栄へ旅立った。
アーモンドアイのすごさとは何か―。改めて考えてみた。後方一気で
ラッキーライラックをあっさりとねじ伏せた
桜花賞。京都の内回り2000メートルで、とても届かないようなポジションからラ
イバルをごぼう抜きした
秋華賞。2分20秒6という驚異的なレコードタイムで制した18年
ジャパンC。ほかにも、世界にその名を知らしめた
ドバイターフや
天皇賞・秋の連覇。そして、若き三冠馬2頭の挑戦を堂々と受け止めてみせた今年の
ジャパンCと、どのレースも深く印象に残っており、そして、どのレースもとにかく強かった。
先日のこと。美浦トレセンで数人の記者と藤沢和師で雑談をしている時に、
アーモンドアイの話題になった。そこで、藤沢和師は「
アーモンドアイは牝馬三冠を獲ってから、その後もしっかり走っている。3歳であれだけ頑張って、古馬になってからもトップを走り続けるのは大変なことだよ。古馬になれば、その条件のスペシャリストと戦うことになり、より厳しい戦いになる。いくら大事にしていても、競走馬には限界があるからね」と話した。これこそが、
アーモンドアイのすごさではないだろうか。
人間の1流アスリートでも、年齢とともに衰えはやってくる。しかし、
アーモンドアイは、引退する最後までレベルの高い走りを見せ続けた。5歳になって衰えはあったかもしれない。それでも、そんなそぶりを見せず、現役最後のレースとなった
ジャパンCで最高の輝きを放った。これまで5歳の冬まで現役を貫き、トップに君臨し続けた牝馬はそうはいない。名伯楽も認めるそのすごさ。
アーモンドアイは本当の意味での女王だった。
12月19日に中山競馬場で引退式が行われる。競馬場で見る
アーモンドアイの姿は、これが最後になるだろう。さらば
アーモンドアイ―。その姿をしっかりと目に焼き付けたいと思っている。
(デイリースポーツ・小林正明)
提供:デイリースポーツ