バビットが単騎の逃げを打ち、16頭が向正面に入った。
オーソリティ、
ブラストワンピースが2、3番手で、
フィエールマンがその直後。少し後ろの馬群の内を
ワールドプレミアが掛かり気味に進み、外には
カレンブーケドール、
ラッキーライラックらがいい手応えでつけている。
これら中団馬群の後ろに、
北村友一の
クロノジェネシスがいた。
「折り合いもスムーズでしたし、いつもの
クロノジェネシスの感じで走ることができていました」
そう話した北村は、3コーナー手前で
クロノジェネシスを軽く促し、外からするするとポジションを上げた。
「昨日、今日と2500mのレースに騎乗させていただいて、自分のなかでいいイメージを描いて競馬をしたつもりです」と北村。
それを
キセキが追いかけて行ったが、さらに2馬身ほど後ろにいた
松山弘平の
サラキアは、ここでは動かず、脚を溜めた。
クロノジェネシスは余裕のある手応えのまま3、4コーナーを回った。ラスト600mで前を2馬身ほどの射程にとらえ、内の
カレンブーケドールと併せるような形で直線に向いた。
直線に入ると、
フィエールマンが
バビットをかわして先頭に躍り出た。
馬体を離してスパートした
クロノジェネシスが、ラスト200m地点で
フィエールマンに並びかける。
勢いは
クロノジェネシスが上だ。このまま一気に突き抜けるかと思われたが、
フィエールマンが食い下がる。さらに外から、
サラキアが凄まじい脚で追い上げてきた。
クロノジェネシスは力強くス
トライドを伸ばし、内の
フィエールマンを競り落とし、外の
サラキアの追い上げをクビ差封じてフィニッシュ。一昨年の
リスグラシューに次ぐ、牝馬では史上2頭目となる同一年春秋
グランプリ制覇をなし遂げた。
見事な横綱相撲だった。自信満々の騎乗で、強い馬の能力をフルに引き出した北村はこう話した。
「未対戦の三冠馬が2頭いますので、そこに譲らないよう、主役として引っ張っていける存在であってほしいと思います」
デアリングタクト、
コントレイルとの対戦がさらに楽しみになった。
(文:島田明宏)