GIII
クイーンC(13日=東京芝1600メートル)にエントリーしている相沢厩舎の
スライリーは430キロ前後の小兵牝馬。1999年の当レースの覇者
ウメノファイバーが重なる方もいるのではないか。後に
オークスを制した
ウメノファイバーは入厩時に400キロほどしかなかったというが、
スライリーは?
「生まれた時はやはりすごく小さくってね。だから牧場のほうでも、そんなに期待していなかったと思うんだけど…。育成が始まるとどんどん良くなって、馬体も大きくなった。だから早めに入厩させられたし、新馬戦をあっさり勝つこともできたんだ」(相沢調教師)
もっとも新馬勝ち後は順風満帆とはいかなかった。2戦目の
札幌2歳Sは力みが抜けない走りで3角過ぎに早々と失速してのしんがり負け。
赤松賞7着にしても、その3週前の
アルテミスSをレース前日のクモズレ(後肢の球節にできるむくれ傷)で取り消し、1週間ほど馬場入りを休む誤算があってのものだ。そこからようやく立ち直ったのが年が明けた前走の
菜の花賞。好位からセンスのいい立ち回りで勝ち切ってみせた。
デビューから手綱を取る石川は「前走あたりから落ち着いてきて、新馬戦を勝ったころの冷静さが戻ってきました。それまではゲートを出て(前に)行かせると、テンパってリズムを崩してしまい、チグハグな競馬になっていましたから。4戦使って、ようやく競馬を覚えましたね。まだ完成の域ではないですけど、こちらが思った競馬ができるようになってきたし、当日の
テンションと折り合いがかみ合うようなら、重賞のここでも通用していいと思います」とパートナーの成長と可能性を肌で感じている。
一方、相沢調教師が口にしたのは人との縁だ。
スライリーの生産は北海道日高町の白井牧場。相沢調教師は大学卒業後に1年ほどここで研さんを積み、牧場の創業者で当時、社長だった故白井民平氏に馬乗りの技術を指南された。
「重賞を勝ってぜひ恩返しがしたいんだ。ビッシリ追った1週前追い後の計量が鞍をつけて440キロ。カイバもしっかり食べられるようになって成長してきた。マイルなら折り合えるし、折り合いさえつけば、いい脚を使える。あとは力が足りるか、足りないか」
スライリーにホースマンとしての礎を築いた場所への思いを託す。
(立川敬太)
東京スポーツ