JRAの“春”が始まって2週間がすぎた。今年は大挙8人の新人騎手がデビュー。注目を集めるのは先週揃って初勝利を挙げた
古川奈穂、
永島まなみの女性陣だが、
小沢大仁は初騎乗初Vの快挙を含む2勝、永野猛蔵に続き先週は
松本大輝も初V。爽やかな風をさっそく皆がターフに吹かせている。とはいえ早期の活躍イコール将来性とならないのは勝負の世界の常であろう。いまやトップ騎手の
田辺裕信とて初勝利に63戦を要し、初年度はわずか8勝。探求心と努力次第でいくらでも未来が変わることを、その数字は示している。
大器晩成ーー。こんな期待を込めて当方が見つめる
フレッシュマンが実は美浦にいる。先週中京(
クイーンズテイスト13着)でトレーナーとしての船出を切った
辻哲英調教師がその人。
戸田博文厩舎の助手時代からの付き合いで、何といっても千葉県佐倉市出身の同郷人。親愛の情が湧く一方、佐倉高(県下有数の進学校)出身と告げられた際は“なるほど知的な顔立ちだ”と内心舌を巻いたこともあった。
さて、そんな辻師に最近、どうも気になり尋ねたことがある。それは新調された厩舎調教服の色彩。
ホワイトシルバーの地をピンクの襟元、袖口、ロゴが鮮やかに彩り、遠目から厩舎を認識できる時計班にも優しい代物なのだが…。おそらく聡明な彼のこと、単純な見た目でなく相応の意味を込めた配色なのでは、と思い至ったのである。
「当たりです(笑)。
コンセプトは僕の名前と出身地でした。辻を逆さに読むと“じつ”。転じてGII(笑)。僕にとってGIは金、GIIは銀のイメージもあって、シルバーをベース色に選択しました。もちろん“銀”で満足ということはなく、一方のピンクは高みを目指そうという決意。佐倉の市章は桜の花形だし、桜は日本を象徴する花でもありますからね。いつかは日本を代表する馬を育てたい。そんな願いを込めてサクラ色も織り込みました」
諸事情からまだ馬質に恵まれない現状だが、6頭がスタンバイする今週から彼の本格的な“春”が幕を開ける。とりわけ名手ルメールで挑む中京
マサノアッレーグラにはサクラの開花=初勝利まで期待されよう。佐倉高出身の著名人といえば長嶋茂雄氏だが、競馬において“ミスター”と称されるくらいの大成功を期待して…。同郷人・
辻哲英の行く末を、満開の願いを込めた調教服とともに見守りたい。
(美浦及び佐倉の無名人・山村隆司)
東京スポーツ