“二刀流”大谷翔平の活躍を「まるで漫画のようだ」と称賛する声が続々と上がっている。投げては101マイルの剛球、打てば97マイルの速球を驚弾だから、
メジャーリーガーすら脱帽するのも当然だろう。そして、今週は“漫画のような馬”が登場する。3連勝でGIIIクイーンCを制し、
桜花賞(11日=阪神芝外1600メートル、全馬55キロ)に駒を進めてきた
アカイトリノムスメである。
母は10年の3冠牝馬
アパパネ、父も05年に牡馬3冠を達成した
ディープインパクト。血統背景だけでも物語の主役にふさわしいが、最も“漫画チック”なのは自身の戦歴だろう。新馬戦を負けて2戦目の東京・未勝利で初V(勝ち時計1分35秒9)。続く
赤松賞を連勝(同1分34秒5)の戦歴は母とうり二つ。しかも2戦のV時計すら母と寸分たがわないのだ。かつて当欄は、それを「奇跡の系譜」と記したが、加えて前走のV時計1分33秒3まで母の
桜花賞V時計と同じなのだから、まさに出来過ぎたストーリー。恐るべくはDNAの力である。
「この子は
アパパネが母になって初めて出した牝馬。兄の
モクレレは調教で反抗するなど、母の勝気な気性がマイナスに作用する面が見られたけど、こちらは素直で母の個性をいい形で受け継いでいる。クイーンCは早め先頭に立つ厳しい競馬でしのいでくれたし、競馬に行っての芯の強さはよく似てるよね」
こう語るのは国枝厩舎の番頭格・鈴木勝美助手。
GI5勝の最大着差が
秋華賞の3/4馬身差だった母同様に派手さはない。しかし、競り合いで負けない勝負強さ。それこそが母譲りなのだろう。もっとも、今回の
桜花賞には強烈な2大ジンクスが待ち受けている。ひとつは
グレード制導入86年以降、クイーンC勝利馬の制覇がないこと。もうひとつは母子制覇が皆無であることだ。
「
アパパネのように
チューリップ賞から本番に駒を進めるのが理想かもしれないけど、母より30キロも軽い小柄な牝馬。カイバをしっかり食べてメリハリが出てきた今の姿を見れば、間隔を空けたことは正解だったと思う。スケール感では
サトノレイナスが上だろうけど、彼女が負けるなら
アカイトリノムスメって気もする。母と同じく一戦ごとに、どんどん良くなっているからね」(同助手)
かつては
チューリップ賞組が断然だった
桜花賞も、近3年の優勝馬はすべて非
トライアル組。傾向を踏まえれば、過去の歴史を覆す、それこそ漫画のようなゴールシーンがあっても決して驚きはないだろう。
(美浦のスポ根野郎・山村隆司)
東京スポーツ